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御殿場に「保育園留学」 子どもと自然満喫、首都圏通勤で定住促進

 御殿場市は6月から、市外在住の家族に2週間滞在してもらい、未就学児を保育施設で預かる「保育園留学」を始めました。暮らしを体験しながら地域の魅力を感じてもらう狙いで、関係人口を増やして移住定住者の増加にもつなげます。どんな留学プログラムなのでしょうか。静岡県内で最初に導入した御殿場市の事例とともにご紹介します。

自然を満喫、家族で短期移住 御殿場市でスタート

 御殿場市は6月、未就学児を子ども園に通わせながら家族で同市での短期間の移住生活を体験してもらう「保育園留学」を始めた。主に大都市圏の家族を対象に富士山麓の豊かな自然の中での子育てや同市の利便性、食や人の魅力を感じてもらい、移住定住の促進や関係人口の増加を図る。

自然豊かなコテージに滞在しながら、リモートワークで仕事をする田中さん夫妻=19日、御殿場市上小林
自然豊かなコテージに滞在しながら、リモートワークで仕事をする田中さん夫妻=19日、御殿場市上小林
 「喧噪(けんそう)から離れ、森を散歩するだけでも子どもたちの目が輝いている」。18日から1週間の予定で滞在中の千葉県の会社員田中良治郎さん(40)とサービス業あゆみさん(35)夫妻は目を細める。
 同市の保育園留学は全国で同プログラムを展開するキッチハイク(東京都)に委託し、地元のフジ虎ノ門グループと連携して実施。参加家族はグループが運営する自然豊かな「高嶺の森のコテージ」に宿泊し、子どもは付近の「高嶺の森の子ども園」に通う。希望に応じて地元農家とマッチングし、米飯の釜炊き体験や養蜂見学なども楽しめる。
 田中さん夫妻は自然の中でリフレッシュしながら、リモートワークなどで一部の仕事をこなす。良治郎さんは期間中に1度、仕事のために千葉県に帰るというが、「首都圏に近く、交通網が整っている御殿場だからこその選択肢。利便性を感じる」と話す。あゆみさんも「静かな森から車で10分走れば市街地に着く。メリハリがいい」と好印象を抱いている様子だった。
 娘のいろはちゃん(5)と息子の奏多君(2)は山の環境を満喫している。高嶺の森の子ども園はヤギやセラピー犬など動物との触れ合いや付近のビオトープでの水生生物の観察、森の散策など自然体験が豊富。2人はさっそく友達をつくり、園庭の芝生の上を自由に転がったり生き物を観察したりして楽しんでいる。
 市は本年度、計20組の家族を迎える予定。勝又正美市長は「今後さらに受け入れを拡大したい」と話す。(御殿場支局・塩谷将広)
 〈2023.06.23 あなたの静岡新聞〉

「高嶺の森のこども園」で受け入れ 4月開園

 4月に開園する御殿場市の「高嶺(たかね)の森のこども園」の落成式がこのほど、同園で開かれた。市外在住の家族に地域に滞在してもらい、未就学児を預かる「保育園留学」の受け入れ先となり、移住定住や地域活性化への貢献も期待される。

自然に囲まれた園の魅力が紹介された落成式=御殿場市の高嶺の森のこども園
自然に囲まれた園の魅力が紹介された落成式=御殿場市の高嶺の森のこども園
 富士山麓の雄大な緑に囲まれた同園は、社会福祉法人「博友会」が運営する。木造平屋(一部2階)建て、延べ床面積約990平方メートル。定員90人で、4月に0~4歳の63人が入園する予定という。
 自然の中での体験やヤギ、ポニーなど多彩な動物との触れ合いを通じて豊かな心の発達を促す。園内の会話は英語で、外国人講師を配置するなど国際人の育成に注力する。保育園留学を受け入れるほか、休日保育や病後児保育なども対応する。
 落成式に出席した勝又正美市長は「御殿場の魅力が凝縮された園。市の宝である子どもたちが自然の中で育ち、世界へ羽ばたいてほしい」と述べた。(御殿場支局・塩谷将広)
 〈2023.03.30 あなたの静岡新聞〉

親は首都圏へ出勤可能 キャンセル待ち全国で2千組以上の人気ぶり

 子どもと一緒に移住体験を―。御殿場市は2023年度、市外在住の家族に2週間滞在してもらい、未就学の子どもを保育施設で預かる「保育園留学」を始める。暮らしを体験しながら地域の魅力を感じてもらう狙い。関係人口を増やし、移住定住者の増加にもつなげたい考えだ。

子どもを受け入れる「高嶺の森のこども園」の完成イメージ図。富士山麓で自然体験ができる
子どもを受け入れる「高嶺の森のこども園」の完成イメージ図。富士山麓で自然体験ができる
 地方と家族をつなぐ事業を展開するキッチハイク(東京都)と連携した取り組み。同社が滞在先や子どもの預け先をセットにした「留学プログラム」を提供する。市未来プロジェクト課の杉山真彦課長は「富士山のある景観や自然、多彩なアクティビティーが楽しめ、一定の都市機能もある。住めばきっと好きになる」と自信を示す。
 子どもを受け入れる「高嶺(たかね)の森のこども園」(4月開園)は富士山麓の森の中にある。時期によって動物との触れ合いや農作物の収穫を行い、子どもも地域の特性を感じられるという。
 同社の保育園留学は1月時点で北海道などの8地域で行われている。テレワーク普及など働き方の変化が追い風となり、キャンセル待ちが2千組以上という人気ぶり。利用者の8割以上は首都圏在住者で、広報担当の福田将人さん(27)=東伊豆町=は「ビルの中や園庭のない保育園に通う子どもに、のびのびとした環境を与えようと参加する家族がいる」と話す。
 先行実施するのは首都圏から離れた地域が多い中、東京まで車で1時間程度という御殿場の立地は大きな利点だ。急に対面の仕事が入っても保育時間内に行き来できる。週に数回出社する人や、両親の一方が出社する家族も参加しやすい。
 23年度はモニターを含め二十数世帯を募る。24年度以降は年間100世帯を目指し、受け入れ施設も増やす。訪れた家族との関係を保ち、その後のまちづくりに生かす方策を検討するという。(矢嶋宏行)
 〈2023.02.08 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞