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KADODE OOIGAWA200万人 島田「稼ぐ観光」へ

 島田市竹下の緑茶・農業・観光の体験型フードパーク「KADODE OOIGAWA」の来場者数が21日、200万人を突破しました。施設は2020年11月に開業、静岡県内最大級のマルシェや地場産品が味わえるレストランなどで構成されています。大井川流域の活性化に向け、島田市観光協会は、市や観光事業者、経済団体と連携し、観光庁が推進する観光地域づくり法人(DMO)形成を目指しています。

「300万人、400万人突破を目指したい」運営会社

 島田市竹下の緑茶・農業・観光の体験型フードパーク「KADODE OOIGAWA」の来場者数が21日、200万人を突破した。記念式典で200万人目の来場者となった長泉町の自営業奥平貴麿さん(34)一家に地元野菜などの記念品が贈られた。

200万人目の来場者となった奥平さん一家(右)=島田市のKADODE OOIGAWA
200万人目の来場者となった奥平さん一家(右)=島田市のKADODE OOIGAWA
 同施設で毎月公演を開催しているメイドアイドル「Nine chocolates(ないん ちょこれーつ)」のメンバー3人が駆け付け、奥平さん一家に花束を手渡した。妻と長女、長男の4人で訪れた奥平さんは「とても驚いたがうれしい。肉や野菜などが充実している良い施設」と笑顔を見せた。
 施設運営会社の福本作治社長は「コロナ禍も落ち着き、多くの方が訪れてくれている。300万人、400万人突破を目指したい」とあいさつした。同施設は2020年11月に開業。県内最大級のマルシェや地場産品が味わえるレストランなどで構成する。22年3月に来場者100万人を達成した。(島田支局・寺田将人)
〈2023.5.22 あなたの静岡新聞〉

新法人を設立 DMO目指す 島田市観光協会代表理事/柴田亘氏【本音インタビュー】

 「観光地経営」の考え方に基づく大井川流域の活性化に向け、島田市観光協会は本年度から一般社団法人として新たなスタートを切った。今後、観光庁の観光地域づくり法人(DMO)登録を目指す。事業方針や目指す姿を聞いた。

柴田亘氏
柴田亘氏

 -新法人設立、DMOを目指す目的は。
 「島田市は地方創生戦略の柱に観光を通じた交流人口拡大、いわゆる『稼ぐ観光』を掲げ、初の観光戦略プラン(2021年1月~25年度)を策定した。法人は観光地経営を担うマネジャーの役割を担う。法人格を持つことで自前の資金調達や契約が可能になるほか、補助金、交付金の活用幅も広がり国の支援が充実する観光庁の登録DMOは最適な組織の姿と考える」
 -島田市の現状をどう捉えているか。
 「お茶や蓬莱[ほうらい]橋などの歴史資源、大井川鉄道のきかんしゃトーマス号、川根本町まで足を伸ばせば奥大井湖上駅など大井川流域には多くの資源があり、空港、新東名高速道路など交通網も充実している。一方でまだエリア全体の認知度が低く、魅力的なコンテンツの量も不足気味。宿泊が少なく滞在時間が短い点も課題。客数、客単価の両方を伸ばす上でこれらの課題に対応するアクションが必要だ」
 -どんな事業を行うか。
 「継続事業や既存の収益事業の強化に加え、情報発信、商品開発、流通促進を新たな柱とする。商品開発では販路まで一気通貫した事業者のサポートを通じ、観光消費の拡大を図る。自主財源の確保や人的リソースなど組織の内部的な課題にも目を向ける。自治体の観光予算はそう簡単に増えない。地域の金融機関との連携や幅広いプレーヤーの参画など、多様な手段を組み合わせて組織の自立を目指す」
 -新型コロナが与える影響と、将来の展望は。
 「観光ビジネスは過去に経験のないレベルまで落ち込んでいるが、観光には根源的な需要があり、新しいスタイルも増えてきた。KADODE OOIGAWAの開業はJA大井川、大鉄、市、中日本高速道路の4者連携で進め、官民が前を向いて挑戦する事例となった。協会の一人一人がプレーヤーとなって知恵を出し合い、流域全体で機運を盛り上げたい」

 しばた・わたる 広告代理店や通信販売会社を経て2015年にエクリプス日高に入社、同年から大井川鉄道に転籍した。19年5月から同社取締役副社長。島田市在住。42歳。(聞き手=中村綾子)
〈2022.5.8 あなたの静岡新聞〉

島田市観光協が“再出発” 一般社団法人、地域活性化に貢献

 新年度から一般社団法人としてスタートする島田市観光協会は28日、解散総会と新法人の設立総会を市内で開いた。今後、新法人を核に市や大井川流域の観光事業者、経済団体と連携して観光地域づくり法人(DMO)の形成を目指す。

一般社団法人としての市観光協会のスタートに向けて意気込む(左から)西村社長、鈴木社長、染谷市長、福本社長=島田市内
一般社団法人としての市観光協会のスタートに向けて意気込む(左から)西村社長、鈴木社長、染谷市長、福本社長=島田市内
 大井川鉄道の鈴木肇社長、西東石油の西村康正社長、KADODE OOIGAWAの福本作治社長、染谷絹代市長の4者が社員総会を構成し、実務トップの代表理事に大井川鉄道の柴田亘副社長が就く。柴田氏は「市の観光戦略プランの中でも『稼ぐ』ことに直結する分野を法人が推進する。観光地としてのビジョンを地域で共有し、地域経済の活性化に寄与できる事業を展開していきたい」と述べた。
 新法人は観光案内や大井川大花火大会をはじめとするイベント運営など従来の事業に加え、DMO事業としてオンラインを活用した情報発信や商品開発、販売・流通促進などに取り組む。今夏をめどに、DMOの候補法人としての登録を観光庁に申請する方針。(中村綾子)
〈2022.3.29 あなたの静岡新聞〉

静岡空港核に活性化 周遊促す新たな交通模索

 閉校した小学校を活用し2022年3月にオープンした島田市湯日の「グランピング&ポート結」では今後のインバウンド需要回復を見込み、急ピッチで予約管理などの多言語対応を進めている。課題の一つは静岡空港からのアクセス。運営するアイワコネクトの深沢一浩社長は「国際線の再開は大きな励み。今後は送迎も必要になる」と対応に追われる。

静岡空港周辺での新モビリティ導入実証実験に向け、電動バイクを試す島田市の職員=牧之原市内
静岡空港周辺での新モビリティ導入実証実験に向け、電動バイクを試す島田市の職員=牧之原市内
 同施設や20年開業の「KADODE OOIGAWA」など大井川流域の観光拠点整備が進む同市は新年度、長年の懸案だった静岡空港からの2次交通充実に向けた事業に本腰を入れる。目玉は新モビリティの導入実証実験で、当初予算案に750万円を計上した。電動のバイクやキックボード、電気自動車(EV)などを想定し、2月末には最高速度30キロで自転車との切り替えも可能な電動バイクの乗り心地を確かめた。市戦略推進課の中村広史課長は「茶畑の広大な景色も旅行者の目には新鮮に映る。移動そのものを楽しみと捉えてもらいたい」と語る。
 課題は観光客のニーズ把握だ。富士山静岡空港株式会社は空港利用者の市内への周遊を促そうと、新金谷駅までだったバス路線を22年から蓬莱橋まで延伸した。観光施設での乗降は現時点で月100人程度といい「市内への呼び込みはこれから」(市戦略推進課)との認識だ。市は本年度実施している空港からのレンタカーを使った市内周遊割引キャンペーンの利用者に市内外のどこを訪ねたか調査し、新交通の配置や選択に生かす方針。
 市の事業の一環で空港見学と市内周遊を組み合わせた2階建てバスツアーなどにも取り組んだ同社の青島弘昌さんは「市内の見どころは点在しているので情報発信が重要になる」と話す。グランピング施設の深沢社長は「アクセス網の充実に加え、島田だけでなく中部地域全体で広域的に誘客する体制づくりが必要」と指摘した。

 <メモ>静岡空港関連では新モビリティの実証実験に加え、空港の利用促進などを目的としたイベント費用200万円も新年度予算案に盛り込んだ。長年活用法が決まらなかった旧金谷中跡地についてはトレーラーハウスを活用した宿泊事業などが民間事業者から提案されたことを受け、25年度の開業に向けて事業用地の整備費補助として5000万円の債務負担行為を設定した。(中村綾子)
〈2023.3.7 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞