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⚽故郷・藤枝に中学生チーム設立 長谷部誠選手の思いは

 サッカー元日本代表の長谷部誠選手(39)=藤枝東高出=が所属するドイツ1部リーグ、アイントラハト・フランクフルトが4月、藤枝市でジュニアユースチーム(中学生年代)を発足します。欧州1部リーグの下部組織が静岡県内にできるのは初めてです。21日に来季現役続行を発表した長谷部選手。中学生チーム設立の経緯や現役続行に対する思いを1ページにまとめます。

世界で活躍する選手育成へ 24年に藤枝サッカー発祥100周年

 サッカー元日本代表の長谷部誠選手(39)=藤枝東高出=が所属するドイツ1部リーグ、アイントラハト・フランクフルトが、藤枝市でジュニアユースチームを発足することが2日、明らかになった。4月から活動を始めるという。同市の北村正平市長が2日の市議会本会議で明らかにした。欧州1部リーグの下部組織が静岡県内にできるのは初めて。 

子どもたちを指導するアイントラハト・フランクフルトの指導者=2022年11月、藤枝市内
子どもたちを指導するアイントラハト・フランクフルトの指導者=2022年11月、藤枝市内
 市によると、同クラブは、ドイツのトップチームへの昇格や世界で活躍できる選手の育成戦略として、他国へのチーム設立を進めているという。
 2022年11月、長谷部選手は藤枝市と同クラブのサッカー交流が進む中で「ドイツ、欧州の方が進んでいる部分が多くある。選手、指導者として、さまざまな面で自分ができることでつないでいきたい」と故郷への思いを口にしていた。クラブは長谷部選手の意向も踏まえ、藤枝での設立を提案した。
 同月には、市と市サッカー協会のトップアスリートを育成する事業の一環で、同クラブの指導者が、市内で初めて藤枝の子どもたちを直接指導した経緯もある。
 サッカーの部活動や少年団のない中山間地域の瀬戸谷地区の子どもがプレーできる場所を提供するため、市立瀬戸谷中を拠点にするという。23年度は中学1年生を対象に募集し、市協会にチーム登録して大会出場を可能にする。
 市は24年に藤枝のサッカー発祥100周年を迎えるのを踏まえ、長谷部選手に次ぐ世界で活躍する選手の育成と指導者のスキルアップを図る考え。
 北村市長は市議会で「将来的なフランクフルト市との協定締結も視野に、長谷部選手の思いを受け止め、子どもたちに夢や希望を与える取り組みとして連携を進め、最大限支援していく」と述べた。(藤枝支局・青木功太)
〈2023.03.4 あなたの静岡新聞〉
 

本格始動へ練習公開 長谷部選手も指導

 サッカー元日本代表の長谷部誠選手(39)=藤枝東高出=が所属するドイツ1部リーグ、アイントラハト・フランクフルトは22日、4月に藤枝市で設立するジュニアユース(中学生年代)チームの本格始動に向け、藤枝総合運動公園サッカー場で練習を公開した。静岡県内初の欧州1部リーグの下部組織が誕生するのを受け、現地で指導した長谷部選手は「子どもたちの未来のために、故郷の藤枝で始められるようになったことをうれしく思う」と語った。

子どもたちと練習に取り組む長谷部誠選手(中央)=22日午後、藤枝市の藤枝総合運動公園サッカー場
子どもたちと練習に取り組む長谷部誠選手(中央)=22日午後、藤枝市の藤枝総合運動公園サッカー場
 チームは4月から中学生になる県内選抜の小学6年生20人の選手とマネジャー1人で構成する。日本サッカー協会(JFA)と日本クラブユースサッカー連盟に加盟し、13歳以下のチームとして大会に出場する予定。拠点は藤枝市サッカー協会などが校庭を天然芝に整備した市立瀬戸谷中に置く。
 約1時間、パス回しや実戦形式の公開練習を行い、途中からは長谷部選手もプレーに加わった。クラブの国際スポーツ企画主任のニコライ・アダム氏は「藤枝の子どもたちはレベルの高い技術を持っている。ドイツのサッカーを教えてあげたい」と話した。
 長谷部選手らは市役所も訪れ、北村正平市長らにチーム設立を報告した。長谷部選手は「設立をきっかけに、フランクフルトと藤枝が一緒になって市が盛り上がってくれたらうれしい」と期待し、北村市長は「素晴らしい成果が得られるよう長谷部選手をはじめ、チーム関係者と連携していく」と述べた。(藤枝支局・青木功太)
〈2023.03.23 あなたの静岡新聞〉

アカデミー開設「海外とのパイプ生かす」 現役続行へ思いも【インタビュー】

 サッカーのドイツ1部リーグ、アイントラハト・フランクフルトに所属する元日本代表主将の長谷部誠(39)=藤枝東高出=が22日、藤枝市内で報道陣の取材に応じた。現役続行を決めた理由や故郷でクラブのアカデミー(中学生年代)を開設する思いを語った。

クラブアカデミーの練習で笑顔を見せる長谷部=藤枝総合運動公園サッカー場
クラブアカデミーの練習で笑顔を見せる長谷部=藤枝総合運動公園サッカー場
 -改めて現役続行を決めた理由は。
 「自分の体のフィーリングとチーム状況で決めた。ただ、体がいい状態ならば子どもたちと一緒にサッカーもできる。実践としていいものを見せられるはず」
 -クラブアカデミーの強みは。
 「海外とのパイプがあり、いい選手がいたら海外に連れて行く。ドイツ人の監督がずっと駐在して教え、UEFA(欧州サッカー連盟)のライセンスを持ったコーチが来る。ヨーロッパのレベルの高い指導を受けられる。静岡の指導者たちにも還元できるはずだ」
 -アカデミーにはどう関わっていくか。
 「帰ってくる回数は限られるが、トレーニングを見たり、映像を確認してアドバイスしたり、十分なサポートをしていきたい。設立の過程でもかなり関わっている。自分の思いもこのプロジェクトには大きく入っている」
 -アカデミーの拠点となる中山間地の瀬戸谷中は自ら視察した。
 「祖母が瀬戸谷出身で僕自身も小さい頃からよく行っていた。サッカーの試合をしたこともある。グラウンドが芝生でサッカーに集中できる良い環境。その場所の活性化につながれば相乗効果として意味がある」
 -どんな人材を育成したいか。
 「プロや世界で活躍する選手が出るのが理想。ただ現実は甘くない。サッカー選手になれなくても人として大きくなって世界に羽ばたいてほしい」
(運動部・名倉正和)
地域再生大賞