「オクシズ」伝統食材、継承へ 魅力味わって
静岡市の中山間地域・奥静岡。愛称「オクシズ」と呼ばれ、豊かな自然や多くの温泉、おしゃれなカフェなどもあって、近年は県内外から来訪者が足を運ぶ注目のスポットになっています。オクシズで受け継がれてきた在来作物を継承しようと、新たな商品開発やPRが進んでいます。地元の取り組みをご紹介します。
赤カブ初収穫 農福連携で生産者減少のオクシズに光
農業従事者の高齢化で生産量が減少している静岡市中山間地域「オクシズ」産の赤カブを増やそうと、地元の障害者就労支援事業所の利用者が本年度から、農家の手ほどきを受けながら栽培に取り組んでいる。障害者の社会参画と農業の担い手確保を進める「農福連携」の取り組み。12月初旬の作業では、利用者が大きく丸々と育った赤カブを初収穫し、満足そうな笑顔を浮かべた。
赤カブ栽培は、同区水見色のわらしな福祉会障害者就労継続支援A型・B型事業所「ワークセンターりんどう」が担当する。同区飯間に広さ約220平方メートルの畑を所有し、利用者が野菜を栽培していたことから、依頼を引き受けた。2日の作業では10代から40代までの利用者8人が1時間半ほどで約50キロの赤カブを収穫した。
「農福連携は利用者が農家から依頼された作業だけを行うことが多い」と永島さん。「事業所が畑を所有し、作物の種まきから収穫までを一通り請け負うのは珍しい」と語る。森さんも「草むしりなどの細かい作業も熱心に取り組むので高品質。来年度もぜひ契約したい」と話す。
同事業所の生活支援員佐藤久美子さん(45)は「農業従事者との交流や人から感謝されることで社会貢献を実感するなど、利用者にとって良い職業経験になっている」と喜んでいる。
収穫した赤カブは、千枚漬や切り漬に加工して販売される。問い合わせは、まいれー大川<電090(7696)2003>へ。
〈2022.12.13 あなたの静岡新聞〉
在来作物でスイーツ ソバ、キビ使って学生考案 静岡のレストランが試作品
静岡県立農林環境専門職大(磐田市)の学生が、静岡市の中山間地「オクシズ」の在来作物であるソバやキビなどを活用したスイーツ作りに取り組んでいる。このほど、プロの調理人による試作品が完成し、試食会を同市駿河区で開いた。
試食会には、同大の丹羽康夫准教授と3年生4人が参加した。試作を担当した同店の小泉江理子さん(49)から、同市葵区井川地区の在来種ソバ、キビ、アワ、赤石豆を使った「そばのスノーボール」「きびのシフォンケーキ」「雑穀のシートブレット」「赤石豆のビスコッティ」の4品について説明を受けた。
「どれも個性の強い素材なので、良さを生かす調理法を考えた」と小泉さん。ビスコッティを提案していた同大の長岡桃子さん(21)は「豆の風味も強く柔らかい食感。とてもおいしい」と喜んだ。
「すぐに提供できそうなものもある。早速、メニューに加えられたら」と鈴木オーナー。丹羽准教授は「在来作物が受け継いできた栽培地の歴史や文化を残さなければいけないことを学生たちに知ってほしかった」と取り組みの意義を語った。
〈2023.02.14 あなたの静岡新聞〉
「シズル感」で食材紹介 人気ユーチューバーと静岡県
静岡県中部地域局が県内在住の人気ユーチューバーと制作した県中部7市町の食材紹介動画が人気を集めている。テーマは近年注目されている「シズル感」。おいしそうな音や映像を駆使して食材の魅力を発信し、県中部エリアを来訪するきっかけ作りを狙う。
第1弾は焼津市のマグロやカツオを紹介する内容で11万回再生。1月公開の最新動画は藤枝市のシイタケと島田市の自然薯(じねんじょ)を取り上げた。
再生回数14万回を超えた第2弾は、静岡市のワサビ、川根本町のユズを題材にし、同市の中山間地「オクシズ」の美しい水や風景とともに、すりおろしたワサビをご飯に載せた「さびめし定食」やユズみそを使った料理などが登場した。収穫や調理の様子も描写され、食事や食材購入ができる場所、宿泊施設の情報も盛り込む。
コメント欄の記述は海外からも多い。同局地域課の森田考美主任は「思わず生唾を飲み込むような映像に仕上がった。チャンネルのファン層とも合致し手応えを感じる」と話す。今後は県の動画コンテンツとしての活用も検討している。
〈2023.01.20 あなたの静岡新聞〉
オクシズの古民家 泊まってじっくり 1日1組限定
静岡市葵区長熊(玉川地区)出身の河合舞さん(39)が、故郷の山あいに開いた古民家カフェの一室を改装し、宿泊施設をオープンした。人口減や耕作放棄地の増加が進む中、訪れた人にゆっくりと里山暮らしの魅力を感じてもらい、移住促進につなげようと奮闘している。
6年前、築100年ほどの木造家屋を改装し、週末限定の「満緑カフェ」を開いた。白菜やカボチャなど地元で採れた野菜を中心としたランチやドリンクを古民家で提供するスタイルが好評を博し、県内外から多くの人が訪れるようになった。
「このまま宿泊できたらいいのにな」。利用客の何げない一言から、カフェの空きスペースを宿泊室に変えようと思い立った。費用の一部をクラウドファンディングで募り、約174万円が集まった。河合さんが内装デザインを担当し、昨夏から地元の大工と協力して整備した。
コンセプトは「里山暮らシック」。施設の周辺は街灯が少なく、天気の良い夜は暗い星も目視できる。宿泊客からは「久しぶりに朝の時間をゆっくり過ごせた」「美しい夜空が見えた」などの声が寄せられる。
高校卒業後、一度は長熊を離れたが「里帰りをすると、家族以外からも『おかえり』と声を掛けられるのがうれしかった。1人の住民として地元を盛り上げたいと思った」と活動の原点を振り返り、新たな施設が「古里の観光拠点になってほしい」と夢を描く。
◇
宿泊は1日1組限定で4人まで利用可能。問い合わせは満緑の宿<電080(1581)4853>へ。
〈2022.04.26 あなたの静岡新聞〉