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⚾高校球児の春 プロ、大学・・・それぞれの新天地

 静岡県の高校野球界を沸かせた3年生たちにも卒業の時が近づいてきました。憧れのプロの世界に進む選手もいれば、社会人チームや大学リーグでの活躍を誓う選手もいます。静岡新聞運動部の担当記者が、それぞれの春を追いかけています。きょうの深掘り情報まとめ〈知っとこ〉では、これまでにお伝えした情報を1ページにぎゅっと詰め合わせてお届けします。

東都1部、六大学リーグへ続々 加藤学園・太田圭哉内野手は駒大

 静岡県内の高校野球で活躍した精鋭が今春、東都大学野球リーグ1部や東京六大学リーグの大学に進学する。太田圭哉内野手(加藤学園)は駒大、近藤爽太外野手(浜松工)が亜大、原崎翔陽投手(駿河総合高)が中大、久松凌大捕手(御殿場西)が青学大、河原崎琉衣捕手(掛川西)が明大に合格。それぞれが新天地での飛躍を目指し、精進を誓った。(運動部・吉沢光隆、結城啓子)

走攻守アピール狙う 駒大・太田(加藤学園)

1年からリーグ戦出場を目指す太田=加藤学園高

 走攻守三拍子そろった加藤学園の太田は、入学直後から経験を積んだ。1年生ながら遊撃手として出場した甲子園交流試合では2安打と好守で鮮烈なデビューを飾った。
 だがここで注目されたことが重圧になり、思うようにプレーできなくなった。「自分がうまいと勘違いしてしまった」。まずは守備を改善しようと1年の冬は基礎練習を徹底。基本動作を体に染み込ませたことでミスが減った。守備の安定感を取り戻して余裕が生まれ、打撃も向上。攻守の大黒柱へと進化した。
 栄光と挫折を味わった3年間を終え、気持ちは次の舞台に向く。「夢はプロに行くこと。走攻守でのスピードを生かしたい」。1年からリーグ戦出場を狙っていく。
強打者として全国区に 亜大・近藤(浜松工)

強打者の風格が漂う近藤=浜松工高

 左打席から強打者の風格を漂わせる浜松工の近藤は、名門亜大でその名を全国区にする決意だ。187センチ87キロの堂々とした体格で、スイングスピードは152キロを計測。高校通算25本塁打を記録した強打が魅力の外野手だ。
 高校3年間は腰痛の影響もあり、満足な結果を残すことができなかった。だからこそ大学での飛躍に意欲を燃やす。部活動の引退後はウエートトレーニングに力を入れ、木製バットで黙々と打ち込んでいる。
 チームメートになるのは甲子園で名をはせた有名選手が多いが、ひるむ気持ちはない。「負けないように努力する。目標は試合に出て日本一に貢献すること。いずれは大学を代表する打者に」と夢を描いている。
強気の内角攻めで勝負 中大・原崎(駿河総合)

将来性豊かな187センチの長身左腕原崎=駿河総合高

 187センチの長身左腕原崎翔陽は中大の練習会に参加し、得意のクロスファイアで勝負した。外角にばかり構える大学生捕手に“注文”を付け、全球を内角に投げ込む強気のアピールが成功した。
 双子の兄で右腕の雄陽とそろって駿河総合高入り。高1秋からベンチに入ったが、高2の秋はコロナ禍で地区大会途中での出場辞退を余儀なくされた。最速を140キロに更新して迎えた最後の夏は第5シード浜松工との2回戦で雄陽が先発し翔陽が救援。爪が割れ、血豆をつくりながらも粘投したが、満塁弾を浴びて敗退した。
 高校での悔しさを生かし「チームに信頼される投手」を目指す。同期には18歳以下日本代表が名を連ねる。「体つきも全然違うけれど食らいついていきたい」
磨いた強肩と観察眼 青学大・久松(御殿場西)

強肩とパンチ力のある打撃が武器の久松=御殿場西高

 中学までは主に投手だった久松。御殿場西高入学後は1年夏まで遊撃を担ったが、森下監督に強肩を見込まれ捕手に転向した。周囲をよく観察し、自分で考えることを学んだ。「失敗することもあったけれど、気付くこともたくさんあった」
 昨春の県大会2回戦では常葉大菊川を相手にエース藁科優斗の好投を引き出し、打席では6打点を挙げて勝利に導いた。パンチ力のある打撃と俊足も魅力。潜在能力の高さを認める森下監督は「厳しい競争の中でやらせたい」と進学先を提案した。
 毎年多くのプロを輩出するリーグで戦うことが楽しみだ。同期は甲子園常連校出身者ばかりだが「強豪だろうが同い年。勝つ気持ちでいく」。活躍を森下監督への恩返しにする。
悔しさ糧に日本一へ 明大・河原崎(掛川西)

飛躍を誓う河原崎=掛川西高

 下級生のころから伝統校掛川西の扇の要を担った河原崎。タイプの違う複数の好投手とバッテリーを組み、配球や野球観に磨きを掛けた。長打を打てる打撃と、遠投100メートル超の強肩が武器。スローイングのさらなる精度向上を求め、練習に熱が入っている。
 3年夏の静岡大会準決勝では、優勝した日大三島に延長タイブレークの末敗戦。1球の重さを痛感した。「大学ではこの悔しさを糧に日本一に貢献したい」。野球に懸ける思いが一層強まった。
 進学が決まった明大は、六大学の名門だけに厳しい競争は覚悟している。「下級生の間から食らい付き、いずれはレギュラーに定着できるよう励みたい」と神宮の舞台での躍動を思い描いている。
 〈2023.1.13 あなたの静岡新聞〉

首都大学リーグで再戦へ 日大三島・松永陽登/静岡・吉田優飛

 静岡県高校野球界を投打の活躍で盛り上げた2人の再戦が首都大学リーグで実現しそうだ。日大三島を春夏2季連続甲子園に導いた松永陽登が筑波大、伝統校静岡で投打の要を担った吉田優飛が日体大にそれぞれ進学することが決まった。ともに4年後のプロ入りを見据えて成長を誓う。


松永陽登(日大三島)筑波大へ

大学でも勝負強い打撃が期待される日大三島の松永=日大三島高

 日大三島のエースで4番を担った松永は、大学では「打撃に磨きを掛けたい」と野手に絞って勝負する。高校時代に際だった勝負強さを武器に「勝利につながる一本を出したい」と活躍を期す。
 春夏2度の甲子園を経験した。「高校球児の誰もが目指す場所に2度も立てた。実績を持って(大学に)入るからにはしっかり活躍しなければ」。高2の秋に東海大会を制し、出場した明治神宮大会は初戦(準々決勝)で九州国際大付に1-2で惜敗。大学では神宮(全国)での雪辱を目標に掲げる。
 「続けるからにはプロを目指す」。西武ドラフト1位の蛭間拓哉(早大)のような「打てて、守れて、走れる選手」が理想。4年後の目標から逆算すると1年で試合に出場し2年でスタメン、ベストナイン獲得。4年までに大学日本代表入りという青写真を描く。

吉田優飛(静岡)日体大へ

二刀流継続も視野に入れる静岡の吉田=静岡高

 吉田は右の強打者としての評価が高いが、最速149キロをマークした投手としての可能性も残している。日本ハムドラフト1位、二刀流の矢沢宏太を輩出した日体大だけに両立の道もありそうだ。
 187センチ、88キロの恵まれた体格。投手として高校に入学したが、調子を落とした1年の冬に外野手に挑戦して以来、二刀流で注目されてきた。部活引退後は「大学入学後に出遅れないように」と練習を続け、筋力トレーニングで体重を増やしながら、上下半身の連動性や柔軟性を高めることを意識している。
 秋のリーグ戦を観戦し「矢沢さんがすごかったしベンチの雰囲気も活気があった」と好印象を抱いた。「環境にも指導者にも恵まれている。4年間で自分を成長させ、二つの選択肢のどちらか、上でできるものを見つけたい」と決意を口にする。
 〈2023.1.12 あなたの静岡新聞〉

ドラフト 安西(常葉大菊川高)ハム4位

 プロ野球の新人選手選択会議(ドラフト会議)は20日、東京都内で開かれ、静岡高出身で明治大の村松開人内野手(21)が中日から2位で指名を受けた。

ポーズをとる日本ハムから4位指名を受けた安西叶翔投手=菊川市
ポーズをとる日本ハムから4位指名を受けた安西叶翔投手=菊川市
 常葉大菊川高の安西叶翔[かなと]投手(17)が日本ハム4位、常葉大菊川高出身で立正大の奈良間大己[たいき]内野手(22)が日本ハム5位だった。
 育成ドラフトでは、富士宮東高の勝又琉偉[るい]内野手(18)がロッテから指名を受けた。
ロッテから育成ドラフト3位指名を受け、仲間に胴上げされる勝又琉偉内野手=富士宮東高

 〈2022.10.21 あなたの静岡新聞〉

プロで活躍する先輩たち 阪神・岩崎ら5投手が来季へ決意

 阪神の岩崎優投手(31)=清水東高出=と高橋遥人投手(27)=常葉橘高出=、中日の鈴木博志投手(25)=磐田東高出、ヤマハ出身=、DeNAの池谷蒼大投手(23)=静岡高出、ヤマハ出身=と高田琢登投手(20)=静岡商高出=が29日、プロ野球静岡県人会の野球教室終了後に取材に応じ、来季の目標と決意を語った。

 岩崎(清水東高出) 好成績で優勝狙う

野球教室で指導をする阪神の岩崎優(左手前)=草薙球場

 岩崎は救援陣の柱として2017年から毎年40試合以上に登板。今季は抑えの出番もあり57試合で28セーブ防御率1・96だった。国内フリーエージェント(FA)権を行使し4年契約で残留。プロ10年目の来季は「いい成績を残してアレ(優勝)できるように」と静かに闘志を燃やす。
 年明けは後輩投手と地元(草薙球場)で合同自主トレを行う計画。「しっかり走ってキャンプに向けての体づくりをしたい」。若手に合わせて例年より早めに体をつくることも考えている。「(若手に)教えてあげるだけでなくこっちにも得るものがあるはず」
 岡田監督から中継ぎとしての期待を寄せられている。「(ポジションは)与えられるものでなく自分で勝ち取るもの」と楽観はしない。昨季、相性が悪かったDeNAとヤクルトを意識し「対戦成績をいい数字にできるようにすることが大事」と決意を口にした。

 高橋(常葉橘高出) 復活へ強度上げる
指導中に笑顔を見せる阪神・高橋遥人

 高橋は4月に左肘のトミー・ジョン手術を受けてリハビリに専念。1試合の登板もなく今季を終えた。現状は「思い切り投げるのはまだだが、7~8割の力では投げられる。少しずつ体を取り戻して徐々に強度を上げていく」と展望を語った。
 野球教室では児童に「負けたくない球団は」と聞かれ、リーグ連覇を達成した「ヤクルト」と答えた。「1年投げていないので偉そうなことは言えないが、去年対応されたイメージがある。自分が手詰まりになるのではなく、相手をそうさせたい」と来季終盤のマウンド復帰へ意欲を示した。

 鈴木(磐田東高出) 目標は開幕ローテ
守備練習で球を投げる中日・鈴木博志

 右腕鈴木は「開幕ローテーション入り」を来季の目標に掲げる。今季最終盤で思わぬ“チャンス”をものにした。9月28日のDeNA戦、二回1死二塁から危険球退場となった先発柳に代わり緊急登板。4回⅔を1安打無失点に抑えた。「緊急の場面で、1軍で結果が出て自信になった」
 2018年にドラフト1位で入団し今季5年目。制球に苦しみ、思うような結果が残せずにいた。2軍では先発で投げ始め、「いかに力まずバランス良くいいボールを投げられるか」を課題に取り組んできた。その成果がDeNA戦で出た。
 1年間を通して安定感のある投球が目標。「両サイドの幅を使って投げることを意識し、変化球の出し入れも少しずつできるようになってきた」。空振りの取れるスライダー習得にも新たに挑戦しているという。

 池谷(静岡高出) 投法戻し勝負の年
キャッチボールをするDeNA・池谷蒼大

 2年目の左腕池谷は4月にプロ初勝利を挙げたが6月にコロナで離脱。1軍に復帰できずに今季を終えた。「修正ポイントが分からなくなってしまった」と振り返る。
 来季を「勝負の年」と位置づける。2年目はサイドスローに挑戦したが、10月のフェニックスリーグで上手投げに戻した。三浦監督らと話し合い「自分の長所(ストレート)で勝負することにした」。サイドを試してつかんだ「左打者の打ち取り方」をそのまま生かすつもりだ。
 静岡高の1年後輩、村松(明大)の中日入りが決まった。「刺激になる。切磋琢磨(せっさたくま)できたら。対戦したら絶対に抑える」と先輩の意地を見せるつもりだ。

 高田(静岡商高出) キャンプから必死
投球を披露するDeNA・高田琢登

 池谷と同じ2年目左腕の高田は1年目を左肩手術からの回復に費やし、今季は2軍で先発5試合、防御率5・06、最速を151キロに更新した。
 前半は中継ぎで「リカバリーをいかに早くするか」を心がけ、その後は先発として「6日間の準備の難しさ」を学んだ。「最初に頑張り過ぎて疲労がたまり、途中から球速が出なくなった」という。3年目は「1軍で出るため、キャンプからアピールしたい」と勝負をかける。
地域再生大賞