知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

風力発電計画 浜松・天竜区に続々 その理由は

 浜松市天竜区佐久間町、春野町の山中で都内企業が風力発電事業を計画していることが明らかになりました。天竜区の風力発電事業計画を巡り、既に民間事業者2社が環境アセスの手続きを進めています。計画が相次ぐ理由や今後の見通し、地域の声を1ページにまとめました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 寺田将人〉

最大12基 佐久間町と春野町の山中に 着工時期は未定

 東京都の「浜松陸上風力発電」が浜松市天竜区佐久間町、春野町の山中で風力発電事業を計画していることが22日、同社などへの取材で分かった。来月4日から、周辺への影響を予測した環境影響評価(環境アセスメント)の配慮書の縦覧が区役所や各協働センターなどでできる。

 浜松陸上風力発電は、洋上風力発電事業を手がける「インフラックス」(東京都)のグループ会社。「仮称浜松陸上風力発電事業」の想定区域は、佐久間町上平山、春野町豊岡、気田の天竜スーパー林道沿い。竜頭山から秋葉神社の間に風力発電を設置する。
 同社によると、事業の想定区域は約1500ヘクタールで、風力発電機を設置する想定範囲は約200ヘクタール。発電機は最大12基を建設し、最大出力は約5万キロワットを見込んでいる。着工時期は決まっていない。
 環境アセス手続きの初期段階にあたる配慮書は10月4日から11月4日まで同社ホームページのほか、市役所や区役所、佐久間、龍山、春野各協働センターで閲覧できる。
 天竜区の風力発電事業計画を巡っては既に、2社の環境アセスの手続きが進んでいる。JR東日本エネルギー開発(東京都)は、JR水窪駅東側の常光寺から竜頭山の尾根を結ぶ南北約10キロに最大12基を設置する計画を進める。中部電力子会社「シーテック」(名古屋市)も佐久間町、龍山町の山中で最大17基の設置を計画している。両社とも2024年の着工を目指す。
 浜松陸上風力発電の担当者は「計画を進めていく中で、住民の皆様に丁寧に対応する」としている。
 〈2022.09.23 あなたの静岡新聞〉

2社が既に環境アセス 市ゾーニング計画が事業後押し 地域は賛否

 ※2019年10月4日付静岡新聞朝刊から
 浜松市北部の中山間地域で、民間事業者による大規模な風力発電計画が相次いで発表された。実現には地元の同意が不可欠だが、住民からは地盤の弱さや建設作業が水源に及ぼす影響を危惧する意見が聞かれる。環境影響評価(アセスメント)の手続きが進むが、事業者には地域事情を十分考慮した調査や説明が求められる。
  JR東日本エネルギー開発(東京都)は8月、天竜区水窪町、佐久間町での計画を発表。山の尾根沿いに風車を最大20基設置し、最大出力は約6万キロワット。事業区域は約2200ヘクタールを見込む。同月には中部電力子会社のシーテック(名古屋市)が龍山町、佐久間町をまたぐエリアで計画を公表。風車は最大28基、最大出力は約7万5千キロワットで市内最大規模。事業区域は4千ヘクタール以上だ。
  市は3月、同区を中心とした19カ所を陸上風力発電候補地として示したゾーニング計画を策定。両社ともに事業区域に候補地を含んでいて、同計画が事業を後押しした。さらに国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度が2020年にも見直される方針。一定期間の発電量の全てを電力会社が固定価格で買い取る仕組みだが、大規模風力は補助が縮小される見通し。買い取り価格も下落傾向で、事業者は早めに計画を打ち出すことで、利益の見通しが立てやすい側面もある。
  いずれも計画段階。今後、風況や輸送路、環境への影響を本格調査し、実現の可能性を探る。水窪、佐久間、龍山の各地区の自治会連合会は調査は認める姿勢だが、事業区域周辺に地滑りや急傾斜地の崩壊の危険があること、山から引く生活水への影響など不安を指摘する声も出ている。
  天竜区では06年に風車約40基、出力約8万キロワットの風力発電が計画されたが地元の同意を得られず断念した。当時独自の実地調査の結果から反対した春野地区は今回、事業区域外だが、同地区自治会連合会の渡辺新五会長(69)は「地域は地盤が弱く土砂災害も多い。山に手を入れるとバランスが崩れ、他地域に影響が出かねない」と気をもむ。
  一方で「地域にはダムの水力発電もある。環境に優しい町としてPRできる」「部品の輸送に伴う既存道路の拡幅で山道が整備される」と実現後の地域像に希望を持つ住民も多い。わだかまりを残さないために、住民側も計画段階から関心を持ち不安や意見を伝え、事業者の調査や説明を促す姿勢が必要だ。

浜松市の風力発電ゾーニング計画とは

  浜松市は2019年3月、風力発電の適正な導入を促進するため市風力発電ゾーニング計画を策定した。計画では、陸上風力発電と浜松市地先の海域での洋上風力発電に関し、立地を避けるべきエリアと、導入が見込まれるエリアを明確にした。

シーテックが発表した風力発電計画で、尾根沿いに風車が設置される予定の山々=浜松市天竜区佐久間町
シーテックが発表した風力発電計画で、尾根沿いに風車が設置される予定の山々=浜松市天竜区佐久間町
  ゾーニング計画によって、①事業者は具体的な見通しを持って、事業を円滑に実施できる②地元住民は早期段階から地域における風力発電の在り方の検討に関与できる③地方公共団体は環境に配慮にした形での再生可能エネルギーの導入促進と地域活性化を図ることができるーとしている。
  陸上風力ゾーニング結果では、19カ所を立地可能なエリアとして公表。うち18カ所が天竜区内になっている。
  ※浜松市ホームページなどを参考に作成。
地域再生大賞