鉄道版の御朱印「鉄印」 天浜線が人気です
天竜浜名湖鉄道(浜松市天竜区)など全国の第三セクター鉄道が企画する鉄道版の御朱印「鉄印」が人気を集めています。中でも社長直筆などの独自路線を展開する天浜線は売り上げ好調です。鉄印の魅力と天浜線オリジナルの取り組みを1ページにまとめました。
〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 寺田将人〉
昨年は売り上げ全国1位に AKBメンバーも直筆目当てに来訪
全国40社の第三セクター鉄道が合同企画した鉄道版の御朱印「鉄印」の発売から2年がたち、ファン層を広げている。新型コロナウイルス禍で地方路線が厳しい経営を強いられる中、新たな集客アイテムに育ちつつある。社長直筆などの独自路線を展開する天竜浜名湖鉄道(浜松市天竜区)は、昨年度の売り上げ全国1位を記録。リピーター獲得を目指す販売戦略で人気を集めている。
販売元の第三セクター鉄道等協議会によると、台帳となる鉄印帳は約4万冊の売り上げ。全40社をそろえた人に贈られる「マイスターカード」の保有者は900人を超える。担当者は「新たな鉄道の楽しみ方として好評いただいている。各社厳しい経営が続いているが、少しでも追い風になれば」と期待する。
中でも売れ行きが好調なのが天浜線だ。昨年度は鉄印1万2千枚を売り上げた。人気の理由は多様なラインアップ。発売当初から続ける社長直筆をはじめ、季節ものやラッピング車両の導入記念など、限定商品で付加価値を生み出している。
売店でのグッズ販売は2020年度が3・5倍(前年度比)、21年度が1・7倍(同)と右肩上がり。旅客収入が落ち込む中、鉄印が雑収入増の柱となっている。
松井社長は「鉄印はお客様と触れ合う機会にもなる。何度も楽しんでもらえる工夫を凝らしながら、集客のきっかけ作りに生かしていきたい」と語る。
〈2022.08.05 あなたの静岡新聞〉
2年前に全国40の三セク鉄道が開始 天浜線は社長の記帳を売りに
天竜浜名湖鉄道(浜松市天竜区)などが加盟する第三セクター鉄道等協議会は10日(※2020年7月10日)、全国の加盟40社の社名やスタンプなどをあしらった「鉄印」を鉄道利用者が集めて回る企画を始める。寺社巡りで人気の御朱印にあやかり、鉄印をコレクションする専用の冊子「鉄印帳」も発売する。
全国の三セク鉄道への誘客と地域振興が目的。利用者は専用の鉄印帳を購入し、300円から記帳を受けられる。鉄印帳は1冊2200円。いずれも各社の指定駅窓口で記帳・購入できる。
天竜浜名湖鉄道は加盟社で唯一、社長が直筆で鉄印を記帳し、県内外の鉄道ファンの誘客を図る。県書道連盟の師範資格を持つ長谷川寛彦社長が「天浜線」の文字を毛筆し、竜や公式キャラクターの朱印を配する予定。前身の国鉄二俣線の全線開通80周年を記念したメッセージも書き添える。同社は天竜二俣駅で記帳・販売する。
長谷川社長は「一筆一筆思いを込めて書いていきたい。三セク鉄道はどこも特色ある地域にある。鉄印を手に全国の鉄道と天浜線のよさを味わってほしい」と企画に期待する。
全社の鉄印を集めた人には記念カードが発行(有料)される。今後は鉄印帳の提示で沿線の飲食店で割引を受けられる特典などを加える予定。
事務局によると、九州の豪雨被害により、運休が続く熊本県のくま川鉄道と肥薩おれんじ鉄道は当面の間、企画参加を見合わせるという。
※肩書、表記などはいずれも当時
水害復興へエール くま川鉄道(熊本県)と連名で限定鉄印も
第三セクターの天竜浜名湖鉄道(浜松市天竜区、松井宜正社長)とくま川鉄道(熊本県人吉市、永江友二社長)は27日、2社連名の鉄印を限定発売する。2020年7月の豪雨水害で被災し、大きな被害を受けたくま川鉄道を支援しようと天浜線が呼び掛けた。両社長が自ら筆をとり、早期復旧と両社の友好を誓った。
「鉄友」の文字と両社長直筆の署名と鉄道名が書かれた鉄印など5種類が、両鉄道の売店で販売される。直筆分は10枚限定。印刷した鉄印も300枚販売する。
くま川鉄道は、橋が崩落した影響で現在も部分運行を余儀なくされている。永江社長は「こうして支援いただけるのは本当にありがたい。今後も『鉄のつながり』を大事にして友好関係を築いていきたい」と語る。
松井社長は「永江社長のアイデアによってわが社の看板商品が生まれた。ささやかな感謝の証しだが、少しでも復興支援につながればうれしい」と話している。
〈2022.08.27 あなたの静岡新聞〉