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国登録有形文化財の岳鉄・本吉原駅ってどんなところ?

 富士市の岳南鉄道の本吉原駅が昨年、国登録有形文化財に登録されたことをご存知ですか? 建設当時のまま残るプラットホームと上屋(うわや)が評価され、指定されました。70年以上前に開設された本吉原駅の魅力を1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・安達美佑〉

1950年開設の駅 文化財登録プレートのレプリカを設置

 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)はこのほど、国登録有形文化財に登録された本吉原駅に登録プレートのレプリカを設置した。

説明パネルとともに展示している登録プレートのレプリカ=富士市今泉の本吉原駅
説明パネルとともに展示している登録プレートのレプリカ=富士市今泉の本吉原駅
 同駅は1950(昭和25)年に開設された。石積みのプラットホームと、68(同43)年に建造のキノコ型の愛らしい上屋が文化財に登録された。
 プレートは説明パネルと一緒にプラットホームの柱に設置された。「登録有形文化財第22―0290号 この建造物は貴重な国民的財産です」と記してある。パネルはホームと上屋の歴史的価値を図面付きで解説し、岳鉄の他の駅の原型となった同駅や、同社の年表も記載されている。建設時期の根拠となった富士ニュース紙面の写しも展示している。
 プレート設置に合わせてホーム入り口の駅名看板も変更し、独特のアーチ形状の上屋と柱をイラスト化し、ホームにあるつり下げ看板の味のある書体で駅名を表記している。
〈2022.5.7 あなたの静岡新聞〉

2021年、登録有形文化財に プラットホームと上屋は当時のまま

 文化審議会は(2021年3月)19日、岳南電車本吉原駅プラットホームおよびホーム上屋(富士市)と鈴木家住宅建造物13棟(掛川市)の計14件を含む24府県の建造物132件を登録有形文化財にするよう萩生田光一文部科学相に答申した。夏ごろにも答申通り告示され、計1万3097件となる。静岡県内では計282件。

独特の形状をした上屋が特徴の岳南電車本吉原駅=富士市今泉
独特の形状をした上屋が特徴の岳南電車本吉原駅=富士市今泉
  岳南電車本吉原駅は、1950年の開業時に間知石積みと呼ばれる技法で築造された約55メートルのプラットホームと、68年に増築された独特な形状の鉄骨造スレートぶき上屋が当時のまま残される。
 上屋は、鋼管を湾曲させた支柱と屋根を支えるアーチ部分がキノコ状のデザインをしている。貨物廃止に伴って駅舎などは撤去され無人駅になったが、ホームに残る職人手書きの駅名看板や製紙工場が隣接する独特の風情で住民に親しまれる。
 近年は市民団体の文化活動の舞台としても活用されている。岳鉄の駅は多くが開業当時の姿をとどめる。
〈2021.3.20 静岡新聞朝刊〉

終電後のホームで音楽会 富士の市民団体、「本吉原駅劇場」開催

 富士市東部を走る岳南電車(通称・岳鉄)の本吉原駅ホームで(2018年4月)7日夜、ハンドベルコンサートが開かれた。岳鉄の良さを知ってもらおうと活動する市民団体が「本吉原駅劇場」と銘打ち、初めて企画した催し。最終電車終了後の工場夜景を背景にした“ステージ”に繊細なベルの音色が響いた。

工場を背に演奏を繰り広げる「MAUハンドベルリンガーズ」=7日、富士市の岳南鉄道本吉原駅
工場を背に演奏を繰り広げる「MAUハンドベルリンガーズ」=7日、富士市の岳南鉄道本吉原駅
 主催したのは地域の課題解決や活性化に取り組む同市の講座「FUJI未来塾」から生まれた団体「富士市情報発信研究会」。メンバーの一人で市内の企業で働く鳥谷可奈子さん(37)=沼津市=が同駅の夜の雰囲気に“一目ぼれ”し、「電車に乗るだけでなく、夜にしかない駅の魅力を知ってほしい」と発案した。
 コンサートは、吉原一中卒の同級生でつくる「MAUハンドベルリンガーズ」が舞台に立った。岳鉄の協力を得て電車でステージに到着したメンバーは、「カノン」や「見上げてごらん夜の星を」などを次々と披露した。ホーム向かい側の商業施設の駐車場には地域住民ら50人以上の聴衆が集まり、幻想的な演奏会を楽しんだ。
 同研究会は11月まで、月1回のペースで劇場を開催する予定。鳥谷さんは「今後は演劇などの舞台にもしてもらいたい」と話した。
〈2018.4.10 静岡新聞朝刊〉
地域再生大賞