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聖地「マルサン書店」閉店 ラブライブが沼津にもたらす効果は?

 沼津市が舞台のアニメ「ラブライブ!サンシャイン‼」の聖地のひとつである、マルサン書店仲見世店が5月末で閉店することが決まりました。作品の舞台やゆかりの場所を巡る「聖地巡礼」は、訪れるファンの思い出となるのはもちろん、受け入れ側にとっては地域振興のチャンスになります。「ラブライブ!」が沼津にもたらした効果をまとめます。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・石岡美来〉

5月末で閉店決定 見納めに多くのファン来訪

 沼津市と清水町に店を構えるマルサン書店は7日までに、旗艦店の仲見世店(同市大手町)を同地区の再開発と建物の老朽化を理由に今月31日を最後の営業日に閉店することを決めた。仲見世店は同市が舞台の人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン‼」に登場し、今でもファンにとって聖地となっている。閉店を聞きつけ、見納めに多くのファンが訪れている。

アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地としても親しまれたマルサン書店仲見世店=沼津市大手町
アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地としても親しまれたマルサン書店仲見世店=沼津市大手町
 仲見世店は1998年、創業店舗の通横町本店や宝塚店などを統合し当時県内最大級の書店として開店。2016年に放送された同アニメ作品には、登場する国木田花丸の行きつけの書店として取り上げられた。
 閉店の理由は、店がある仲見世店周辺区画の再開発が正式決定したため。営業継続には数千万円の設備投資が必要で、コロナ禍による紙媒体の市場縮小も響き、店存続を断念した。再開発後の活用方針は未定。
 閉店をSNSで知り、急きょ訪れた愛知県知立市の会社員大庭集平さん(26)は「聖地がなくなるのは残念だが、ファンとしては再開発で沼津が発展してほしい。新しくなったらまた来たい」と話した。古沢洋専務は「アニメの放送終了後もこんなに長く支持されると思わず、ありがたかった」と謝意を述べた。
 今後はJR沼津駅北口近くの駅北店と清水町のサントムーン店で営業する。
〈2022.5.8 あなたの静岡新聞〉

沼津の聖地各地が盛り上がり ファンが続々

「ラブライブ!」のファンが集まる三の浦総合案内所=沼津市内浦長浜
「ラブライブ!」のファンが集まる三の浦総合案内所=沼津市内浦長浜
 ※2019年1月5日静岡新聞朝刊より
 沼津市を舞台にしたアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の劇場版が4日、全国で公開された。テレビ放送開始から約2年半。劇場版公開に、大みそかのNHK紅白歌合戦への出場効果も加わり、ファンが同市を訪れる“聖地巡礼”はますます活発化している。
  劇場版を市内で唯一上映するJR沼津駅北口の「シネマサンシャイン沼津」は4日、全10回上映の座席券が完売し、約2千人が観賞した。「これほどの混雑は5、6年ぶり」と担当者。JR沼津駅ビル内の沼津観光協会では市が作製した「沼津ロケ地マップ」の配布が始まり、約170部がファンの手に渡った。
  作品に海岸などの風景が多く登場する同市内浦地区。3回目を迎えた「あわしまマリンパーク」での年越しイベントには競争率約3倍の抽せんを勝ち抜いた約700人が参加した。伊藤裕支配人兼館長(45)は「ラブライブ!の勢いは衰えを知らない」と驚く。
  施設内にさまざまなグッズや書籍を置く同地区の三の浦総合案内所には、12月29日から1月3日までに1200人超が来た。18年は累計で約7万9千人が訪れた。アニメ放送前の15年累計の約10倍。責任者の大村文子さん(65)は「市や商店街のイベントや新しいグッズの購入が主な目的になってきた」と変化を感じ取る。
  聖地巡礼プロデューサーの柿崎俊道さん(42)=東京都=は「ファン同士、ファンと現地の人が知り合うことで“巡礼”が繰り返されている」と分析する。作品中の場面を見るという初期の訪問目的が、沼津という場所を楽しむことに変化しつつあるという。

作品に登場する場所→観光する町 アニメきっかけに再訪も増加

沼津仲見世商店街
沼津仲見世商店街
 ※2018年1月4日静岡新聞朝刊より
 静岡新聞社は2017年12月8~18日、ファンが集まるつじ写真館(沼津市上土町)と三の浦総合案内所(同市内浦長浜)で、同市に対する印象などを聞くアンケートを実施し、417人から回答を得た。ファンの実像や沼津に対する思いが浮かび上がった。
  回答者の在住地は全国36都府県に及んだ。県内を除くと東京が19・4%で最も多く、神奈川、埼玉を加えた3都県で43・9%に上った。96・2%が男性。20代が54・2%を占め、30代が27・6%と続いた。最年少は14歳で最年長は54歳だった。
  同市を初めて訪れたのは、54・2%が1期のテレビ放送が始まってから。県内在住者を除くと61・9%に上る。放送開始を機に訪れた人が多いと言えそうだ。
  来訪の理由について複数回答可で聞いた。86・1%の「作品に出てくる場所に行く」に次ぎ、73・1%が「景観を楽しむ」を選んだ。「緑と青の美しいコントラスト」(愛知・18歳男性)「海と富士山のコラボレーション」(埼玉・34歳男性)など、景色に魅せられて再訪するケースの多さをうかがわせた。
  同市の魅力に対する自由回答では、「作品を大切にしてくれていてうれしい」(長野・28歳女性)など、住民の優しさ、温かさを挙げる人が約3分の1に上った。課題についてはアクセスの不便さや道路環境の悪さを指摘する声が目立った。
  作品をきっかけに16年8月、群馬県から同市に移住した会社員長谷川岳哉さん(22)は「ミカンの生産者や漁師など、繁華街ではない場所で仲良くしていただく人が増えた。改めて居心地の良さを感じている」と、沼津への印象を話した。

活況続けるには何が必要? 聖地巡礼プロデューサーに聞く

 ※2018年1月4日静岡新聞朝刊より

  コンテンツツーリズムがテーマの刊行物「聖地会議」を発行する聖地巡礼プロデューサー柿崎俊道さん(41)に聞いた。
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柿崎俊道氏

  -シリーズ終了後、何をすれば良いか。
  「作品の価値を評価するファンが、粘り強くイベントを続け、活動を行政や商店街などが支援すること。例えば埼玉県久喜市が舞台の『らき☆すた』(2007年)は、駅前スナックの運営をファンが受け継ぎイベントの拠点にした。同県飯能市の『ヤマノススメ』(13年~)のファンは、祭りに声優を呼ぶなどして市内の盛り上げに貢献している。活動の継続が、18年春の新シリーズ放映決定につながった」

  -イベント以外の実例は。
  「『輪廻のラグランジェ』(12年)の千葉県鴨川市は15年秋、官民連携の組織が原画や絵コンテなど制作資料を引き取った。17年夏、市郷土資料館で初の原画展を行い、にぎわいをみせた。アニメの素材を文化財として捉えるこうした試みが1地域に1作品ずつあってもいい」

  -定住人口増につながる方策は。
  「制作会社を誘致してはどうか。富山県南砺市の『ピーエーワークス』は東京で活躍していたクリエーターが00年に設立。行政から社屋や情報通信などの支援を受け、約100人のアニメーター雇用を創出した。徳島市の『ufotable徳島』は、同市で09年から毎年春秋、イベント『マチ★アソビ』を実施し、数万人を集めている。沼津市もファンの好感度が高いうちに、さらに規模が大きい活動に向けて準備を進めることが大切だ」