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海洋文化施設巡り議論白熱 静岡市議会2月定例会

 静岡市議会2月定例会は2022年度一般会計当初予算案など65議案を原案通り可決し、18日に閉会しました。今回、焦点となったのは総事業費240億円の巨大プロジェクト「海洋文化施設」の整備事業計画。第2会派から関連費の削除を求める修正動議が出され議論になりましたが、結果は原案通り通過。コロナ禍を理由に凍結されていた事業は再び動き出すことになりました。期待と不安が交錯する最近の動きを1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・村松響子〉

海洋文化施設事業再開 修正動議も原案通り通過

 静岡市議会の観光文化経済委員会は11日、2022年度一般会計当初予算案のうち、清水港の海洋文化施設整備に関する費用を削除するよう求める修正動議が提出され、反対多数で否決した。

海洋・地球総合ミュージアムの館内イメージ(静岡市提供)
海洋・地球総合ミュージアムの館内イメージ(静岡市提供)
 修正動議を出した第2会派の創生静岡は「新型コロナウイルス禍の社会情勢や市の財政状況を考えると、総事業費240億円の大型投資の再開は見切り発車だ」と主張した。
 これに対し、最大会派の自民党や公明党、志政会は「地元自治会や経済界から早期整備を求める要望があり、アフターコロナを見据えて着実に事業を進めるべきだ」として修正案に反対し、市当局提案の原案に賛成した。
 水族館や博物館などの機能を併せ持つ海洋文化施設はコロナ禍を理由に事業が凍結されていたが、市は再開に向けて当初予算案に169億円の債務負担行為を設定した。
 委員会では経済波及効果や事業収支の見通しに関する質問が相次いだ。谷川原賢一海洋文化都市政策課長は開館1年目の入館者について67万人を見込むとし、中部横断自動車道の開通や清水港への客船再開がさらなるプラス効果になるとの見方を示した。水族館の展示内容に関しては「珍しい深海魚や他の施設で展示実績の少ない生物を展示できる」と述べ、深海ザメやシュモクザメを例示した。
 〈2022.03.12 あなたの静岡新聞〉

 ■原案通り、65議案可決し閉会
 静岡市議会2月定例会は18日、最終本会議を開き、過去最大となる3378億円の2022年度一般会計当初予算案や市教育委員の任命など65議案を原案通り可決、同意し、閉会した。
 当初予算案を巡り、清水港の海洋文化施設整備に係る費用の削除を求める修正動議が提出され、反対多数で否決した。修正案は創生静岡が提出し、共産、緑の党が賛成、自民、公明、志政会、街づくり研究会が反対した。
 創生の石井孝治氏は新型コロナウイルス禍の現状や需要予測、今後の経済状況を検討した上で、「どうしても今進めるべき事業か大いに疑問。全体像が不明確で、入館者の予測も極めて楽観的」と提案理由を説明した。
 自民の丹沢卓久氏は施設が観光や娯楽の機能だけでなく、海洋研究や人材育成、清水のまちづくりなどの核となるなど「社会的な価値が大きく期待されている」と主張した。
 当初予算案は13特別会計と4企業会計を合わせ、総額6541億円。7月第3月曜日の祝日「海の日」を7月20日に固定化するよう国に求める議員発議の意見書も可決した。
 〈2022.03.19 あなたの静岡新聞〉

相次ぐ「ハコモノ」整備には批判も 積極予算案の舞台裏

 2021年の大みそか。静岡市清水区の清水マリンパークで行われたカウントダウンイベントに登場した田辺信宏市長は「来年は海洋文化施設の事業者も決まる。世界から清水に観光客を呼び込みたい」と力強く語った。

22年度当初予算案の主な大型ハード事業
22年度当初予算案の主な大型ハード事業
 聴衆に交ざってあいさつを聞いた地元経済界関係者は「止まっていた周辺の民間開発が動きだす。長年停滞している清水の経済に欠かせない事業だ」と期待感を示した。
 新型コロナウイルス禍で凍結された清水港の海洋文化施設整備計画。水族館と博物館の機能を併せ持ち、教育機能も備えた「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」をつくり、交流人口拡大と地域経済の活性化を図る総事業費約240億円の巨大プロジェクトだ。市は22年度当初予算案で169億円の債務負担行為を設定。パートナーとなる民間事業者を公募し、26年の早い時期の開館を目指す。関係者によると、複数の企業グループが関心を示しているという。
 予算案には、葵区の駿府城公園近くに建設中の歴史博物館整備や市役所清水庁舎の移転に関する基本計画の見直し費用も計上。市民文化会館の再整備やアリーナ誘致、サッカースタジアムの候補地検討などの費用も盛り込み、「県都」の表情を大きく変えるような開発が控える。
 だが、こうした「ハコモノ」事業には批判も根強い。海洋文化施設は民間事業者と市で利益や損失を分担する制度を導入する方針で、市はコロナ禍の長期化などで収益が落ち込んだ場合、最大10億円超の財政負担が生じる可能性があると試算する。
 財政運営も厳しい。22年度当初予算案は50億円の財源不足を基金の取り崩しによって穴埋めした。23年度以降も70億円前後の不足が見込まれ、財政の硬直化が続く。
 22年度は田辺市長にとって3期目の任期最後の1年となる。人口減が続く中、拠点整備を起爆剤に地域のにぎわい創出につなげられるのか。来春の市長選を見据え、大型ハード事業の是非を巡る議論が熱を帯びそうだ。

 <メモ>静岡市は「世界に輝く静岡」の実現に向け、スピード感を持って優先的に取り組む五つのプロジェクト「五大構想」を掲げている。
 「世界に存在感を示す三つの都心づくり」として、静岡、清水、東静岡・草薙をそれぞれ「歴史文化」「海洋文化」「教育文化」の拠点とするための事業を推進。22年度当初予算案では歴史博物館や海洋文化施設の整備などを列挙した。
 市全体では「生活の質を高める二つの仕組みづくり」と銘打ち、「健康長寿のまち」と「まちは劇場」の推進を打ち出している。五大構想の関連事業費は計55億2000万円を計上した。
 〈2022.02.17 あなたの静岡新聞〉

過去最大規模に膨らんだ静岡市22年度予算案

 静岡市が2月14日発表した2022年度当初予算案は、静岡、清水、東静岡の3都心の文化拠点づくりなど「五大構想」の着実な推進に重点を置き、新型コロナウイルス対策(53億2千万円)を上回る55億2千万円を計上した。市の将来像を左右する大規模プロジェクトを本格始動させる一方、持続可能なまちづくりを目指してポストコロナの経済社会変革や防災・減災にも目配りした。

静岡市2022年度当初予算案の主な事業
静岡市2022年度当初予算案の主な事業

 ■大型ハード事業
 目玉は新型コロナウイルス禍でストップした清水港の海洋文化施設整備事業の再開だ。水族館と博物館の機能を併せ持ち、教育機能も備える「海洋・地球総合ミュージアム(仮称)」を建設する。民間資金活用による社会資本整備(PFI)で事業を進め、26年早期の完成を目指す。22年度はパートナーとなる民間事業者の公募を開始する。
 葵区の駿府城公園エリアでは23年1月の開館に向け歴史博物館の建設・管理運営費を盛り込んだ。新サッカースタジアム建設は21年度に続いて調査費を計上し、22年度中の候補地決定を目指す。

 ■デジタル・グリーン
 デジタル化の加速に向けては証明書発行などの窓口業務でキャッシュレス決済を導入し、市民サービス向上を図る。中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を後押しするほか、デジタル格差の解消に向け情報通信機器の体験会も開催する。脱炭素社会の実現では住宅や工場への屋根置き型太陽光発電設備の導入を進め、電力の地産地消を目指す。

 ■教育・子育て
 学校現場のICT環境を整備し、オンライン環境が整っていない家庭にモバイルルーターを貸し出す。22年度から「静岡型小中一貫教育」をスタートさせ、地域と連携した学校づくりを進める。産後ケア事業を拡充し、こども園や放課後児童クラブで医療的ケア児の受け入れも進める。

 ■防災・減災
 大規模災害が全国で相次ぐ中、防災情報ポータルサイトを構築する。同報無線設備をアナログからデジタル方式に更新するほか、消防団員の処遇改善へ出動報酬制度を創設する。
 解説=大型ハードに積極投資 市の将来像明示を
 一般会計で過去最大規模となった静岡市の2022年度当初予算案。市が第3次総合計画(15~22年度)の総仕上げと位置づけるように、求心力が強いまちづくりを目指して大型ハード事業への積極投資が際立つ内容となった。
 一方、最大の課題である人口減対策は既存事業の拡充が中心で、目新しさを欠いたと言わざるを得ない。市は交流人口や関係人口を含めた人口活力の維持に注力する方針だが、転出超過に歯止めをかけるため、定住人口の維持拡大へ思い切った施策を打ち出しても良かったのではないか。
 田辺信宏市長は14日の記者会見で、いわゆる「ハコモノ」事業について「公共投資を呼び水にして民間投資を促し、経済活性化につなげる」と意義を強調した。だが、厳しい財政状況が続く中での事業推進には少なからず批判がある。市民の理解を得るための丁寧な説明はもちろん、ハード整備によって市の将来像をどう描くのかをしっかりと明示してほしい。
 〈2022.02.15 あなたの静岡新聞〉