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岳南電車 ユニークな取り組み次々と

 富士市の岳南電車がユニークな企画を次々と打ち出し、誘客を図っています。コロナ禍で2020年度の乗降人員、売上高が創業以来最低となる中、新たな時代に合った観光商品で起死回生を目指します。電車の運転体験や沿線地域の振興も兼ねたイベントなど、奮闘する岳鉄の挑戦をご紹介します。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・吉田直人〉

4月から運転体験 旧貨物線を活用 誘客の目玉に

 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)は4月から、吉原駅構内の旧貨物線を活用した「岳鉄運転体験」を開催する。3月11日からインターネット予約を受け付ける。コロナ禍で乗降客の減少に苦しむ同社は毎月2回程度の開催日を設け、誘客の目玉にしたい考え。

試験運転をする社員=富士市内(岳南電車提供)
試験運転をする社員=富士市内(岳南電車提供)
 同社は運転体験実現のため、吉原駅西側で、2012年3月末で廃止された貨物輸送用の側線「吉原駅貨物線1番」の復活に向けてクラウドファンディング(CF)を実施した。当初の目標額800万円に対し、最終的に1300万円が寄せられ、整備を進めてきた。
 運転体験は現在も営業運行している7000形電車の運転席に座って、側線約100メートルを運転する。体験前に現役運転士から操作手順などの講習を受ける。
 3月上旬に試験運転を終えた。3月中はCFでプレオープン体験のリターンを希望した人が体験する。
 運転体験の参加条件は、小学5年以上で身長130センチ以上であること。小学生は保護者の同伴が必要。参加費は1万5千円。1人に付き同伴1人(5千円)が可能。当面は4月9、30日、5月4、21日、6月4、18日に実施する。予約は「ヤフーパスマーケット」から。
〈2022.03.11 あなたの静岡新聞〉

7000形車両入線25周年を記念した取り組み CFで資金募る

 富士市の岳南電車(通称岳鉄)が7000形車両入線25周年を記念した「運転体験プロジェクト」を始動させた。22日(※2021年4月)からクラウドファンディング(CF)で800万円の資金を募り、廃線となった線路の復活を目指す。新型コロナウイルスの影響で2020年度の乗降人員、売上高が創業以来最低となる中、新たな時代に合った観光商品で起死回生を図る。

運転体験プロジェクトをPRする岳鉄職員=富士市内
運転体験プロジェクトをPRする岳鉄職員=富士市内
 岳鉄の起点となる吉原駅西側には2012年3月末に廃止された貨物輸送用の側線「吉原駅貨物線1番」が残存する。10年近く整備されずにレールはさび付いて枕木は朽ち、草で荒れた状態。かねて運転体験の要望は多数あったが、唯一実現の可能性がある約200メートルの側線復旧への投資は現状難しく、資金募集に懸けた。
 目標金額に達した場合に支援者が得られるリターンは多彩な19品目。ファンならずとも魅力的なお返しを用意した。最高額200万円(1口)でJR吉原駅ホームに面した岳南電車吉原駅壁面へのメッセージ(広告)掲載でき、15万円の寄付でひと足早く運転体験できる権利を10口用意した。記念グッズや中古部品に加え、「ナイトステイホームの貸切開催」(30万円、4口)、「オリジナルヘッドマーク掲出」(8万円、16口)、「貸切の駅員、駅長体験」(5万円、10口)なども注目される。
 同社はコロナ禍を乗り切るため、運転士発案で夜間に停車した電車内に宿泊できる「ナイトステイホーム」や終電後に線路上を探検する「ナイトウオーク」など奇抜な企画を実現してきた。岳鉄担当者は「かなり高額で無謀な挑戦だが、運転体験が可能になれば今後の観光の目玉になる」と実現に期待する。
 寄付は6月15日まで募る。目標金額に達した場合は11月にプレイベント、12月に運転体験を開始する予定。
 〈2021.04.17 静岡新聞朝刊〉

電気機関車を展示 「機関車ひろば」昨年オープン、新たな観光拠点に

 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)が21日(※2021年8月)、所有する電気機関車を展示する「がくてつ機関車ひろば」を同市富士岡の岳南富士岡駅に開設した。同駅で完成記念式典があり、関係者がテープカットをして新たな観光拠点の誕生を祝った。製紙産業を長年支えた電気機関車が今後、同市の観光振興を担う。

ライトアップされた電気機関車=富士市の岳南富士岡駅
ライトアップされた電気機関車=富士市の岳南富士岡駅
 ひろばは補助金など使って同駅舎西側に整備した。90年以上前に製造された車両を含む貴重な電気機関車4台を展示した。汽笛や前照灯、パンタグラフを復元し、ウッドデッキや展示車両を解説する案内板を設置した。夜間照明やフェンス、通路も整えた。
 2012年に貨物輸送が廃止されるまで活躍し、同駅に置かれたままだった電気機関車4台は、塗装職人の団体「塗魂ペインターズ」や鉄道愛好家団体「私鉄EL愛好会」の手で復元され、現役当時の姿を取り戻した。
 空気系統などを補修した同愛好会の小崎裕太代表らは「汽笛やパンタグラフ、ブレーキなどパーツが可動する私鉄の電気機関車は他にない。みんな注目している」と話した。
 式典では汽笛やパンタグラフが動く様子を披露した。石井謙一社長は乗客減少の苦境を伝え、「地域の足の確保に、観光誘客も必要。ここを出発点に、魅力作りや沿線の活性化を図りたい」と述べた。夜間にはライトアップも行った。
 9月末までの土曜、休日は1927(昭和2)年製の「ED291」など一部の車内を開放する。機関車グッズなどの特設物販ブースも設ける。今後、現役運転士によるミニガイドを実施予定。
〈2021.08.22 あなたの静岡新聞〉

企画続々 運賃無料キャンペーンも初実施

 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)は22日、謝恩企画の一環として「がくてつウォーキング2022」を開催した。多くの来場者が吉原本町駅から岳南富士岡駅まで約7・1キロの道のりを歩き、沿線の魅力を味わった。

地図を受け取ってウオーキングに出発する参加者=富士市の岳南電車吉原本町駅
地図を受け取ってウオーキングに出発する参加者=富士市の岳南電車吉原本町駅
 7000形車両導入25周年の謝恩イベントで、2月13日までの土曜、休日が運賃無料になっている期間に合わせて企画した。
 思い思いの時間に吉原本町駅を降りた来場者は地図を受け取ると、吉原商店街や住宅街を流れる田宿川の遊歩道、源頼朝にゆかりのある鎧ケ淵親水公園、竹採公園など史跡や公園を巡り、かぐや姫伝説が残る周辺の歴史や豊かな水の恵みを楽しんだ。参加者特典を設ける飲食店もあり、吉原宿の木札も無料配布された。
 両親と参加した今泉小3年の男子児童は「富士岡駅で食べるクレープを目標に頑張る」と元気に出発した。石井謙一社長は「電車で訪れ、沿線の街の魅力を発見してほしい」と話した。
 2月11日には吉原駅をスタートして沿岸部を巡る11・2キロの「富士と潮風、毘沙門天コース」を実施する。
〈2022.01.23 あなたの静岡新聞〉

 ■キャンペーンで乗降客、前年比2・8倍に
 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)はこのほど、昨年末からことし2月の16日間実施した運賃無料日の乗降客数などをまとめた。新型コロナウイルス感染拡大前の前々年同期比で1・6倍、コロナ下で利用者が激減した前年比で2・8倍と乗客が増加した。
 同社は「7000形導入25周年謝恩企画」として観光庁の補助事業を活用し、2021年12月25日~22年2月13日のうち、三が日を除く土曜休日に運賃を無料にした。
 同社によると、16日間の総乗降客数は3万1610人。前々年の16日間と比べて158・9%、前年比で275・6%だった。
 最多は1月22日の3288人で前々年比2・7倍。前年比では6・8倍を記録した。2月11日の3226人も前々年比2・9倍、前年比4倍で、いずれも初のウオーキング企画を開催した日だった。
 期間中の利用者は市内からが5割、県内市外が3割、県外からが2割で、初利用者が4割に上った。年代別では30、40代が4割で、複数人で訪れる家族連れの運賃の負担感が軽減したとみる。乗降駅では、イベントを開催していた岳南富士岡駅や終着駅の岳南江尾駅で利用者が伸びた。
 石井謙一社長は「広いエリアの方に岳南電車の魅力を知ってもらう機会になった。今後、イベントとの組み合わせや、ファミリーにお得な切符なども考えたい」と話した。
〈2022.03.13 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞