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「藤枝朝ラーメン」 幼い頃からの愛着がユニークな食文化を支える?!

 みんな大好きラーメン。今や「国民食」とまで言われるようになり、個人的な印象の中ではずっと人気を保っているように感じていますが、実はそうではないようです。博報堂生活総合研究所では、長期時系列調査「生活定点」を行っています。この中に「好きな料理」について聞き取り調査を続けていますが、それによるとラーメンは1992年には12位でしたが、2002年に4位となるや、12年、22年と連続3位の座に就いています。しかし、この全国的な調査とは違い、独特なラーメン文化を生み、育ててきたところがあります。藤枝市です。地元のユニークな食文化を学び、さらにその魅力を発信しようという動きをまとめました。

「藤枝朝ラーメン」紙芝居に 文化誕生の歴史を紹介 園児に読み聞かせ、給食で提供

 藤枝市は地元名物「藤枝朝ラーメン」の文化の誕生にまつわる歴史を描いたオリジナル紙芝居を作成した。前島保育園で22日、年長園児が保育士の読み聞かせを通じて地元の食文化を学び、郷土への愛着を深めた。

藤枝朝ラーメンの紙芝居に見入る園児=藤枝市立前島保育園
藤枝朝ラーメンの紙芝居に見入る園児=藤枝市立前島保育園
 市によると、朝ラーメンは茶産地の藤枝で早朝から働く茶業関係者のため、ラーメン店で提供が始まったとされる。紙芝居は朝ラーメンを愛する市民有志の団体「藤枝朝ラー文化軒究会」の公認を受け、文化が始まったきっかけや、冷やしラーメンの提供の経緯などを紹介する。デザインは市地域おこし協力隊の中山ほのさん(26)が担当した。
 園児は読み聞かせに夢中になり、興味を示した。給食の時間ではチャーシューやホウレンソウなど豊富な具材が入った同園独自の冷やしラーメンを食べた。口いっぱいに頬張り、おかわりをする子もいた。年長の渡辺智久ちゃん(5)は「氷が入っているみたいに冷たい。食べやすくておいしかった」と笑顔を見せた。
 紙芝居は希望した市内の認可保育所や認定こども園に市が貸し出す。ウェブ動画も公開する。
(藤枝支局・青木功太)
〈2024.05.23 あなたの静岡新聞〉

藤枝市「朝ラー」ガチャ登場 市内10店自慢の一品モチーフ 観光案内所、店舗に設置

 藤枝市は、市の食文化「朝ラーメン」の魅力を発信するため、市観光協会と市民有志の団体「朝ラー文化軒究会」と連携し、若者や子どもに人気のガチャガチャを活用したまちおこしプロジェクト「街ガチャin藤枝 朝ラーメンガチャ」を開始した。市内10店舗の自慢の朝ラーメンをモチーフとしたアクリル製キーホルダーを販売する。1回300円。

朝ラーメンのガチャガチャを楽しむ親子連れ=藤枝市役所
朝ラーメンのガチャガチャを楽しむ親子連れ=藤枝市役所
 観光客だけでなく、地元にも愛される新たな土産品としてPRし、地域活性化につなげる狙い。国の地域活性化起業人制度を活用して同市に派遣されているインターネット関連会社DMM.com(東京)の井上久美子さん(40)の提案を企画化した。
 11日からマルナカ(志太)、ちっきん(田中)、麺屋花枇(岡出山)、支那そば処麦(田中)、麺や虎(大新島)、らぁ麺屋まるみ(高洲)、麺屋八っすんば(南新屋)の7店舗に順次設置する。発売日の6日から市観光案内所にも置いている。
 キーホルダーは10店舗の朝ラーメンと「シークレット」の計11種。発売初日は市役所ロビーと市民会館前で限定販売され、親子連れらが楽しんだ。
 ガチャガチャは29日に市民体育館で開催される「フード!スマイルフェスティバル」などのイベント会場でも設ける。
(藤枝支局・青木功太)
〈2023.10.11 あなたの静岡新聞〉

「朝ラー」つるん おかわり! 郷土食浸透へ市が初企画 藤枝の園児

 藤枝市立前島保育園の園児約100人が18日、地元名物「朝ラーメン」をおやつの時間に味わった。地元の食文化を知って地域への愛着を深めてもらおうと市が初めて企画した。園児は口いっぱいに頬張り、「おいしい」と笑顔を見せた。

朝ラーメンを味わう園児=藤枝市立前島保育園
朝ラーメンを味わう園児=藤枝市立前島保育園
 朝ラーメンは茶産地の藤枝で早朝から働く茶業関係者らのために、ラーメン店で提供が始まったとされる。園児はこの日のために、朝ラーメンの麺や具材をひもと折り紙で制作した作品を廊下に飾った。
 同市の「支那そばしげもと」から提供された子どもでも食べやすい冷たいラーメンの麺とスープに、焼き豚やほうれん草などを加えた。園児は勢いよく食べ進め完食。「冷たくておいしい」「おかわり」「また食べたい」と好評だった。
 市は今後も市内の保育園などで提供する。市こども課の担当者は「子どもを通じて保護者にも郷土食を浸透させ、地元への愛着を育んでいきたい」と話した。
(藤枝支局・青木功太)
〈2023.05.20 あなたの静岡新聞〉

朝ラーの文化が根付く藤枝で異彩を放つ一店

藤枝市西益津地区・田中城 家康ゆかり、円い城と円い街並み【わたしの街から】  藤枝市田中にある徳川家康ゆかりの田中城。家康がタカ狩りのために晩年に訪れたほか、タイの天ぷらを食べて腹痛と食あたりを起こした土地とされる。江戸時代後期、田中藩主・本多家の庭園であった下屋敷は城の南東にあたり、築山、泉水、茶室が設けられ、四季の草花や月見の名所で知られていた。市が庭園跡を史跡公園に整備し、本丸櫓(やぐら)を含むゆかりの建築物を移築、復元。城にあった建物の実物が現在まで残る歴史的価値の高い文化財として公開している。4月上旬は下屋敷の横を流れる六間川沿いで桜が見頃を迎え、地元住民に親しまれている。

※写真は上が南、下が北 同心円形の田中城跡周辺。縄張の名残がある(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
※写真は上が南、下が北 同心円形の田中城跡周辺。縄張の名残がある(本社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 
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 堀や馬出曲輪・・・史跡点在
 田中城は約500年前、豪族・一色氏が今川氏の命を受け、屋敷を拡大して城としたのが始まりとされている。駿府城の西の守りとして重要な役割を担っていた。本丸を中心に四つの曲輪(くるわ)と堀が同心円状に配置された、全国的にも珍しい直径約600メートルの円郭式城郭が特徴。上から見ると、亀の形に似ていることから「亀城」「亀甲城」と呼ばれていた。かつての本丸は現在の西益津小に位置する。
 四重の堀に囲まれた縄張で有名な城は1871年に廃城となり、土地の多くは民有地に姿を変えた。しかし、現在も西益津地区田中地域の道路の形状は城の縄張の名残を伝えている。本丸から二、三重目の堀「二之堀」と「三之堀」、城門の外側に三日月形の堀と背後に土塁を設けて敵の場内侵入を防ぐ馬出曲輪(うまだしくるわ)「三日月堀」のほか、門跡や外堀跡、土塁跡などの史跡と案内板も地域に点在する。
 地元住民でつくる田中城跡保勝会は、ガイドや小学校での歴史の授業などを通じて魅力を発信している。2023年の大河ドラマ「どうする家康」の放映を受け、同年の下屋敷の入場者数は2万3336人と前年度比2436人増。保勝会の発起人の村松巌さんによると、県内外の観光客が多いという。
 一方で、村松さんは市民の田中城への知名度が低いとも話す。「日本に一つしかないとされる同心円形の城。全国に広めたいと同時に、藤枝市民にも良さを知ってもらって誇りにしてほしい」と思いを込めた。

朝ラー根付く地域 まちづくりに一役 「ちっきん」
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煮干しラーメンを提供する知識亮二さん=藤枝市田中の「ちっきん」

 朝にラーメンを食べる食文化「朝ラーメン(朝ラー)」で知られる藤枝市。市内には競合店が多く、味のレベルも高い。田中城下屋敷から徒歩5分のラーメン店「ちっきん」は午前9時の開店から客が行列を作る。煮干しと昆布の2種類の天然食材でだしを取ったスープが、朝ラーの文化が根付く藤枝で異彩を放っている。
 店主の知識亮二さん(52)が妻の貴久枝さん(51)と共に経営する。2010年ごろに煮干しの風味とうまみが特徴のラーメンを開発後、評判はうなぎ上り。しょうゆ、塩、冷やし、つけ麺を選んで味わえる。週末はインターネットの口コミなどを見て訪れた県外客も多いという。
 知識さんは「自信を持って提供できる商品。藤枝のラーメンを通じて、まちづくりの一役を担いたい」と言葉に力を込めた。
(藤枝支局・青木功太)
〈2024.04.16 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞