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回顧2021⑥ これからどうなる?淡島ホテル

 ■臨時休館から営業再開へ
 沼津市の淡島ホテルの旧運営会社「淡島ホテル(現AWH)」の破産手続きに関し、同社の財産を債権者の不利益になるように処分したとして、静岡県警は破産法違反(詐欺破産)の疑いで経営者ら5人を逮捕しました。淡島ホテルは臨時休館に入りましたが、元従業員らが新会社を設立。営業再開を目指して奔走しています。逮捕から新会社設立までの動きをまとめました。
 ※夜の〈知っとこ〉は1月4日まで連日、「回顧2021」をお届けします。2021年の重大ニュースをぎゅっとまとめて振り返ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

詐欺破産容疑 9月に運営会社の社長ら逮捕

 沼津市の淡島ホテルの旧運営会社「淡島ホテル(現AWH)」の破産手続きに関し、同社の財産を債権者の不利益になるように処分したとして沼津署と静岡県警捜査2課は22日(※9月22日)、破産法違反(詐欺破産)の疑いで、AWHを傘下に持つ保証事業会社「オーロラ」(名古屋市)の社長(52)=東京都港区六本木6丁目=ら5人を逮捕した。同署などは社長らが財産の没収を免れ、引き続きホテルを経営するために財産を不正に処分したとみて調べを進める。

淡島ホテル=9月、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
淡島ホテル=9月、沼津市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 オーロラ社長のほかに逮捕されたのは、オーロラ取締役(48)=東京都中央区日本橋中洲=、AWH社長(61)=函南町平井=、AWH取締役(76)=神奈川県座間市相模が丘3丁目=、オーロラ傘下の淡島マリンパーク社長(48)=同県横須賀市鴨居2丁目=の4容疑者。
 5人の逮捕容疑は共謀して2019年10月上旬ごろ、AWHの破産手続きに関し、同社が地権者から借り受けていた借地権について日付をさかのぼって解約するとともに、無償でグループ会社の淡島マリンパークに移転させ、AWHの財産を債権者らの不利益になるよう処分した疑い。
 AWHは19年12月20日、静岡地裁沼津支部が破産手続き開始を決定した。5人は債権者による同年7月3日の破産手続き申し立てよりも前に借地権が移転されたように装ったという。
 借地権の資産価値は約1億3千万円。借地権を建物の所有者から切り離すことで建物の買い手を付きにくくしオーロラ側が継続してホテルを運営できるようにする狙いがあったとみられる。結果として財産は目減りし、債権者に分配するはずの現金が減ったという。
 淡島ホテルを巡っては、オーロラ社長が社長を兼ねるホテル経営会社「グッドリゾート」(東京都)が20年2月に米国のホテルチェーン大手とフランチャイズ(FC)契約を交わし、現在はホテルの名称を変更した上でオーロラ側が委託した関連会社が営業している。

 <メモ>淡島ホテル 1991(平成3)年、旧東京相和銀行(現東京スター銀行)の故長田庄一元会長が、会員制高級リゾートホテルとして開業した。フランスのシラク元大統領が訪問したことでも知られる。人気アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の登場人物の実家が経営するホテルのモデルとされる。現在のホテル名は「ウィンダムグランド淡島」。
 〈2021.09.23 あなたの静岡新聞〉

11月から臨時休館の状態が続いている

 沼津市のリゾートホテル「淡島ホテル」は24日(※11月24日)、臨時休館に入った。ホームページ上で発表した。

淡島ホテル
淡島ホテル
 同ホテルによると、現時点で期間などは未定。担当者は理由を、再オープンに向けて営業体制を整える準備期間とした上で「一日も早い再開に向けて努める」と述べた。
 同ホテルを巡っては、2019年12月に静岡地裁沼津支部が旧運営会社「淡島ホテル(現AWH)」の破産手続き開始を決定した。AWH親会社の役員2人は、AWHの財産を債権者の不利益になるよう処分したなどとして今月、破産法違反(詐欺破産)の罪で起訴されている。
 同ホテルは19日、ホテル名を「ウィンダムグランド淡島」から「淡島ホテル」に再度改称したと発表した。
 〈2021.11.25 あなたの静岡新聞〉

元従業員が新会社設立 1月半ばの営業再開目指す

 沼津市の淡島ホテルの旧運営会社「淡島ホテル(現AWH)」の破産手続きを巡り、同ホテルの元従業員と債権者団体が2日(※12月2日)、新会社「フェニックス」を設立し、ホテルの売却先が見つかるまでの暫定的な運営を担う意向を示した。ホテルは11月24日から臨時休業中で、破産管財人から委託を受けて早ければ来年1月半ばの営業再開を目指す。

新会社設立を正式発表した杉森大樹社長(中央)=12月2日午後、沼津市の淡島ホテル
新会社設立を正式発表した杉森大樹社長(中央)=12月2日午後、沼津市の淡島ホテル
 同ホテルを巡っては、静岡地裁沼津支部が2019年12月、AWHの破産手続き開始を決定し、破産管財人が財産調査を進めている。同地裁支部は今年10月にAWHから実質的に運営していた関連会社への事業譲渡を認めない決定を出し、破産管財人がホテルの建物などの引き渡しの手続きを進めている。
 新会社は財産処分が完了するまで、ホテル管理業務を受託することを目指す。売却先の下でもホテル運営を継続して担いたい考え。営業再開に向け、自主退職した元従業員約80人から希望者を再雇用していく。運転資金の確保については、既に複数社がスポンサーに名乗りを上げているという。
 新会社の社長に就任した杉森大樹元総支配人(38)と「淡島ホテルグループの責任を追及する債権者の会」が2日、同ホテルで記者会見した。AWH側に対し、未払いになっている元従業員の賃金などの支払いを求める集団訴訟を起こすことも検討していると明らかにした。杉森社長は「ホテルを愛するお客様やスタッフの笑顔を取り戻す」と決意を語った。
 〈2021.12.03 あなたの静岡新聞〉

年末年始1週間限定で営業 元従業員「日常戻ったよう」

 臨時休館中の沼津市のリゾートホテル「淡島ホテル」が29日、年末年始限定の営業を始めた。期間は来年1月4日まで。アルバイトとして接客を務める元従業員は「日常が戻ってきたよう」と約1カ月ぶりに宿泊客を迎え入れた。

エントランスで宿泊客を出迎えるスタッフ=29日午後、沼津市の淡島ホテル
エントランスで宿泊客を出迎えるスタッフ=29日午後、沼津市の淡島ホテル
 29日午後2時ごろ、ホテルではチェックインする夫婦や家族連れらがみられた。同市が舞台のアニメ「ラブライブ!サンシャイン‼」をきっかけに訪れた会社員安達大稀さん(29)=横浜市=と橋本隆仁さん(23)=滋賀県=は半年ほど前に予約したという。「休館を知った時は残念だったが、こうして念願がかなってうれしい。館内を隅々まで楽しみ、アニメの世界観を堪能したい」と声を弾ませた。
 同ホテルは、新会社での営業再開に向け11月24日から臨時休館している。サービスが行き届くよう客室数を通常の半数ほどに制限し対応した。初日は約20組60人が宿泊。客室には「スタッフ一同」の手書きのメッセージカードを添え、宿泊客への感謝の気持ちを込めた。
 元総支配人で新会社社長の杉森大樹さん(39)は「スタッフの表情も自然と柔らかいように見える。年末年始を無事に迎え、営業再開を目指したい」と話した。
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