居住区の土砂撤去進む 遠い「安心できる日常」【再起への一歩 熱海土石流3カ月④】

 9月下旬の熱海市伊豆山。7月3日に地域をのみ込んだ真っ黒な土砂は、道路の白線が見えるまでに取り除かれていた。

大規模な土石流が発生した現場=3日午後4時57分、静岡県熱海市伊豆山
大規模な土石流が発生した現場=3日午後4時57分、静岡県熱海市伊豆山
9月下旬の熱海市伊豆山。土砂やがれきの撤去が進んだ
9月下旬の熱海市伊豆山。土砂やがれきの撤去が進んだ
大規模な土石流が発生した現場=3日午後4時57分、静岡県熱海市伊豆山
9月下旬の熱海市伊豆山。土砂やがれきの撤去が進んだ

 土砂は標高約390メートルの逢初(あいぞめ)川源頭部から約5万5千立方メートルが流れ下ったとされる。県や市は地元建設業者の協力を得て、警察などの行方不明者の捜索活動と並行して撤去作業を行ってきた。家屋が立ち並ぶ区域では、重機で土砂を取り除く作業がおおむね完了した。居住区域より山手では、県の要請を受けた国が直轄で砂防工事を進める。
 最優先するのは土石流起点から約500メートル下流の砂防ダムにたまった土砂約7千立方メートルの撤去。ダムへと続く工事用道路を24時間態勢で造成している。「ダムの堆積土砂の撤去は年内に終わらせたい」と熱海緊急砂防出張所の栗木信之所長(59)。高台からショベルカーを遠隔操作し、ヘリコプターで土砂を運び出す作業も同時進行させている。
 ただ、被災地に設定された「警戒区域」の解除に不可欠とされる仮設砂防ダムや、新しい砂防ダムはまだ設計段階だ。県は逢初川河口の伊豆山港にたまった土砂も撤去してきたが、川からは濁り水が今も流れ続けている。漁師の松本早人さん(46)は「船のエンジンに泥が沈殿すると故障の原因になる。港の電気や水道も復旧しておらず、土砂がなくなったからといって漁は再開できない」と声を強める。
 土石流の発生後、起点南西の太陽光発電所付近で“第2の盛り土”の存在も表面化した。8月中旬の大雨では、警戒区域外の複数の住民が保養所に身を寄せた。「あそこが崩れたら今度は自分たちが危ない」。そんな恐怖感からの避難行動だったという。県は第2の盛り土の規模や崩落の危険性などを調査している。
 土砂の撤去は進んでも、地域の安全や安心には程遠い。警戒区域との境目に自宅がある岡本道男さん(70)は「何年も見守っていくしかない」とつぶやき、規制線の向こうの復旧作業を見つめた。
 
 <メモ>熱海市は8月16日、災害対策基本法に基づく「警戒区域」を土石流の被災地に設定した。許可を得た人以外が立ち入ると罰則の対象になる。市は国直轄の砂防工事の進捗(しんちょく)状況や、崩落部分の不安定な土砂の除去などを判断材料に解除や見直しを行う方針。伊豆山地区の主要道路の市道伊豆山神社線は警戒区域外としているが、安全性が確保されていないとして10月1日現在で一般車両の通行を認めていない。

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