被災の弁当店「情報」もお届け 交通状況、困り事対応…住民寄り添いSNS発信 熱海土石流

 熱海市伊豆山の土石流災害に遭い、7月末に営業を再開した国道135号沿いの弁当店「喜与味」が、災害関係情報のSNS発信に力を入れている。同店の高橋一美代表(45)は発生直後から現地に残りボランティアに従事しながら、配達で蓄積した住民情報を活用し、避難者の困り事に対応している。

ボランティアに従事する傍ら、インスタグラムなどで災害関連情報を発信する高橋一美代表=8月中旬、熱海市伊豆山の「喜与味」(画像の一部を加工しています)
ボランティアに従事する傍ら、インスタグラムなどで災害関連情報を発信する高橋一美代表=8月中旬、熱海市伊豆山の「喜与味」(画像の一部を加工しています)


 同店は目の前を土石流が流れたが、家屋に一部泥が入る程度の被害で収まった。高橋代表は災害発生直後、片側車線が泥で埋まった国道135号で交通誘導している最中、逢初橋の上に土砂が流れるのを目撃した。動画を店のSNSで発信すると、地域住民やマスメディア、行政関係者から大きな反響があった。「毎日の配達で地域住民の情報は頭に入っている。発信すれば役に立つのでは」と、情報発信を続けた。
 店のインスタグラムとフェイスブックでは、道路の状態やバスの運行状況、禁止区域内でのボランティア作業など、生活支援情報を中心に掲載。避難所でもアカウントが周知され、小学校、商工会議所や青年会議所、行政関係者のグループLINEには国道付近の状況を毎朝報告した。すると「自宅に残した猫の状況を見てほしい」「窓の戸締まりを確認して」など、避難者から困り事相談が次々寄せられ、動画や画像で状況を伝えた。
 弁当店はボランティアの要望を受け、国道が復旧した7月29日に営業再開。ボランティアからは「近くにコンビニがなく、暑さで買い置きもできないのでとても助かる」と好評だ。以前は1日約500個販売していた弁当も、従業員が被災した今は約100個にとどまるが「弁当が伊豆山を発信するためのアイテムになるかも」と前向きだ。「多くの人が助けてくれたことを地元住民は忘れてはいけない。被災者だから分かることを伝え続けたい」と先を見据えた。

 

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