「はしか」高まる警戒感 子どもの定期接種を確実に 静岡県、冷静対応呼びかけ

 感染力が非常に強い「はしか(麻しん)」の患者数が国内で21人となり、昨年1年間の7割をすでに超えた。静岡県内では感染例が見られず、国のデータでも85%の人が抗体を持っているとされるため、県は「感染拡大は予想していない」として冷静な対応を呼びかける。ただ、定期接種を終えていない子どもは注意が必要だ。新型コロナウイルス禍の際の利用控えの影響で、抗体を持っていない子が増えているという。

静岡県内と全国のМRワクチンの接種率
静岡県内と全国のМRワクチンの接種率
小児科ではワクチンの不足は見られないという=3月下旬、静岡市駿河区のかわはら医院
小児科ではワクチンの不足は見られないという=3月下旬、静岡市駿河区のかわはら医院
静岡県内と全国のМRワクチンの接種率
小児科ではワクチンの不足は見られないという=3月下旬、静岡市駿河区のかわはら医院


 定期接種は1歳と、「年長」に当たる小学校の入学前年度の2回。県感染症管理センターによると、コロナ禍の接種率は2021年、1、2回ともに94%で、はしかの排除状態を維持するための国の目標値「95%」を下回った。全国平均も同様の傾向で、22年には2回目の接種率がさらに低くなっている。
 静岡市駿河区の小児科かわはら医院では、3月のワクチン申し込みは例年と変わらない頻度で、年長児の一部が年度末の“駆け込み接種”に訪ねる程度だった。県内ではコロナ禍でも毎年0~2人の患者が確認されていて、河原秀俊院長は「定期接種ができる年齢になったら、すぐに利用の検討を」と強調する。
 国内では直近3週間で、東京都や大阪府などで計18人が感染した。ほぼ全員が30代以下。0歳児なども含む半数が予防接種をしておらず、1回の20~30代も目立った。半数が国外で感染したと推定される。
 はしかは発症すると免疫が長期間持続するとされる。50代以上は幼少期の感染経験などで抗体を持つ人が多いとみられるが、国の注意喚起を受け、県内でも一部の診療所で高齢の患者からワクチンの問い合わせが寄せられるなどし、医師が文書を配布するなど対応する事例が見られた。
 厚生労働省は3月下旬、卸売販売業者に、小児科にワクチン供給を優先するよう求めた。感染力の強さは「免疫のない集団では1人から12~14人にうつる」と表されるものの、後藤幹生県感染症管理センター長は「国民の85%に免疫がある点で、新型コロナウイルス禍の初期とは様子が異なる」と説明。「予防接種を2回受けたか分からないなど、不安な人は抗体検査で確認してほしい」と話している。
 (社会部・大須賀伸江)

はしか(麻しん)とは 10~12日程度の潜伏期間を経て発熱、咳や鼻水の症状が出た後、さらに高熱となり、湿疹が出る。一部は肺炎や脳炎と重篤な合併症があり、約10年後に知能や運動障害を起こして死に至ることも。日本は2015年に世界保健機関(WHO)から「排除国」の認定を受けたが、00年以降は年間で1万人以上が罹患した年もみられた。ワクチンの効果は非常に高い。06年に麻しん風しんの混合「MRワクチン」が導入され、2回接種になった。

 

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