リニア27年開業断念 JR東海表明 静岡工区遅れで34年以降に

 JR東海の丹羽俊介社長は29日、リニア中央新幹線品川―名古屋間の開業時期について、当初目標にしていた2027年の開業を断念する方針を正式に表明した。静岡工区は着手から開業まで約10年を見込んでいて、開業時期は34年以降になる見通しとなった。 ⇒静岡市や大井川流域市町の首長の受け止め

国交省の第2回モニタリング会議に臨むJR東海の丹羽俊介社長(手前左から三人目)=29日午後、東京都
国交省の第2回モニタリング会議に臨むJR東海の丹羽俊介社長(手前左から三人目)=29日午後、東京都
国交省の第2回モニタリング会議に臨むJR東海の丹羽俊介社長(手前左から三人目)=29日午後、東京都

 県内のリニアトンネル工事に伴いJRが実施する水資源、環境保全対策の実施状況を確認する国土交通省の「第2回モニタリング会議」が都内で開かれ、委員に対して明らかにした。
 同社は静岡工区について、工事ヤードの整備やトンネル掘削工事などを含め、工事の着手から開業までに10年1カ月を要すると説明。中央新幹線推進本部副本部長の沢田尚夫常務は先行して工事を進めている山梨、長野工区の南アルプストンネルの掘削実績を踏まえ、「技術的な観点から(約10年を想定する静岡工区の)工期短縮は厳しいと言わざるを得ない。工期が延びる可能性は十分にある」との見方を示した。
 仮に24年4月に静岡工区に着手できたとしても、開業は34年よりもさらに遅れる可能性を示唆した。37年を目指す大阪までの延伸開業への影響も避けられない見通し。
 丹羽社長は開業目標時期について、静岡工区は工事契約締結からすでに6年4カ月が経過していると指摘した上で「名古屋までの開業の遅れに直結している。残念ながら、27年の開業は実現できる状況にない」と明言した。着手のめどが立たない静岡工区を理由に、現時点で新たな開業時期を見通すことは難しいとしつつ「一日でも早い着手に向け、静岡県との対話をさらに精力的に進める」と強調した。
 静岡工区の状況から「27年の開業は困難」との認識を示してきたJRは23年12月、開業目標時期を「27年」から「27年以降」に変更した。今年2月に行われたモニタリング会議の初会合で事業計画の提示を改めて求められ、工程を精査していた。
(政治部・大沼雄大)


川勝知事「静岡工区以外の活用を考えたい」  JR東海がリニア中央新幹線の2027年開業を断念したことを受け、川勝平太知事は29日、「静岡工区以外は27年までに完了できるということなので、その状況をしっかり確認した上で、どのような活用をしていくべきかを建設促進期成同盟会において考えていきたい」とのコメントを出した。沿線都府県でつくる期成同盟会で、持論の「部分開業」を主張する考えを示唆したとみられる。
 知事は「静岡工区の完了が34年以降になることが分かったのは非常に重要」とも指摘。国のモニタリング会議にできる限り協力するとの姿勢を示した上で、「リニアの整備推進と大井川の水資源、南アルプスの自然環境保全との両立に向けて、JR東海との対話をできる限り速やかに進めていく」とした。

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