大自在(2月3日)豆まきと恵方巻き

 巻きずしにもいろいろな種類と呼び方がある。のりで巻くからのり巻き、キュウリを巻くとかっぱ巻き。
 立春前日のきょうは節分。恵方巻きを食べる人も多かろう。この名称は形態ではなく食べ方に由来。言葉の成り立ちが面白くて調べると、「広辞苑」には第6版(2008年)から載った。
 恵方巻きという呼称はコンビニチェーンが二十数年前に使いだし、全国に広まった。ただし、節分に恵方を向いて巻きずしを切らずに食べる習俗は大阪の一部地域で昭和初期にはあったとされ、以前は「丸かぶりずし」「招福巻き」などと言っていたという。
 新旧問わず辞書にある「恵方参り」の風習は明治時代に初詣と入れ替わって言葉だけになった。千年以上の歴史がある恵方という言葉を巻きずしに使ったネーミングには感心するばかりだ。一方、節分に豆をまくという習わしは室町時代の記録にあり、豆まきは間違いなく伝統行事と言える。
 旧暦の年越しに邪気をはらい幸せを願った年中行事「追儺[ついな]」「鬼やらい」と、一年は立春から始まるという考え方が交じって節分の豆まきになったらしい。古来の豆まきでも新しい恵方巻きでも、暦を生活に取り入れ、節目を意識して日々すごすのはよいことだと思う。
 今年の恵方は東北東。この日くらいは方角を気にするのもいい。自民派閥の裏金事件で、使途を明らかにすることは政策活動費の自由にかかわるなどという議員発言を聞くにつけ、またけむに巻くのかと腹が立つ。何をだまってモグモグやるのか、政治は国民の方を向いているのか。

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