「郷ケ平3号墳出土馬形埴輪」(古墳時代) 古墳時代の乗馬文化 子細に 浜松市博物館【コレクションから㉒】

 日本列島における乗馬の風習は5世紀(古墳時代中期)に朝鮮半島から伝わり、馬具も急速に普及した。この頃の馬や馬具は非常に貴重で、所有できるのは一部の有力者に限られていた。金銅で飾られた馬具は、威信財として武具などとともに古墳に副葬された。また、古墳の墳丘上に配置され、儀式の場面を再現していたとされる人や動物などの形象埴輪[はにわ]にも馬形埴輪の出土例が多く、当時の馬の重要性がうかがえる。

浜松市博物館 「郷ケ平3号墳出土馬形埴輪」(古墳時代)
浜松市博物館 「郷ケ平3号墳出土馬形埴輪」(古墳時代)

 5世紀後半の小型前方後円墳である郷ケ平3号墳(浜松市浜名区都田町)から出土した本資料は、県内でも数少ない全体像が復元された馬形埴輪である。全長103センチ、高さ70センチで、馬の姿形とともに装飾性の高い馬具とそれらを固定する革帯や金具が丁寧に表現されており、当時の馬具の形態や装着方法を立体的に見て取れる。また、胸部の革帯および鏡板(轡[くつわ]の一部)、杏葉[ぎょうよう](革帯から垂下される装飾品)に鈴を多数表現している点が特徴的である。
 こうした学術的評価に加えて、やや垂れ目で頭部が大きく脚の短いフォルムにかわいらしさを感じられることから、常設展の中でも人気の高い展示品の一つとなっている。
 (鈴木京太郎・学芸員)

 メモ 浜松市中央区蜆塚4の22の1<電053(456)2208>
 「郷ケ平3号墳出土馬形埴輪」は常設展示室で公開中。

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