大自在(1月15日)台湾人と中国人

 3歳から日本で暮らし自称「日本語しかできない台湾人」の小説家温又柔[おんゆうじゅう]さん(43)は、高校、大学で外国語として中国語を学んだ。そうして自分にとって「国語」とは何か、「国」とは何かを考えるようになった。
 法政大在学中に必修で語学留学した上海外国語大で、台湾人と中国人の間の溝を身をもって知ることになる。授業で南方訛[なま]りを指摘され、顔見知りになった警備員には「中国人にしてはきみの中国語は下手だなあ!」と言われた。
 留学生向けに企画された北京・西安旅行でホテルにチェックインする際、中華民国のパスポートを出すと現地ガイドは「こんな国、ないよ!」と日本語で言った。同行の学生は皆日本人。ショックは想像に難くない(「『国語』から旅立って」2019年)。
 20年以上前の逸話でも、生々しさは今に通じる。台湾総統選は、中国との統一を明確に拒否する民進党候補の頼清徳副総統が勝利。中国は経済、軍事面での圧力を一層強めるとみられる。台湾の大学の調査(21年)に自分を「台湾人」と答えた人は63・3%いた。「中国人」は2・7%、「どちらでもある」は31・4%。1980年代からの民主化を受け、台湾人意識が定着している。
 さらに本音に迫ろうとした別のアンケートでは、良好な日台関係のため、日本人は「政治の話題は避けるべき」という回答があった(水野俊平著「台湾の若者を知りたい」岩波ジュニア新書)。
 台湾問題を日本人が知ったうえで避けることはあり得る。だが、知ろうともしないとすれば、それこそ「問題」だ。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞