遊びが「信頼」の土台作る【思春期の心 支える力 不登校④】

 子どもたちは遊びの中でけんかと仲直りを繰り返します。けんかは自己主張です。けんかして仲間外れにされても「ごめん」と言って謝ることで再び仲間に入れてもらえます。この繰り返しが、人間への信頼と距離感の土台を作ります。遊びを通してのこの営みは、おおむね10歳くらいまでだと考えます。その時期を越えると、プライドやメンツが気になって友達との関わりの中で「ごめん」を言えなくなってしまう人が多くなるからです。

(イラスト・矢野晶子)
(イラスト・矢野晶子)

 最近、鬼になるのが嫌で鬼ごっこに入れない子が出てきたと聞きます。友達と関わる力は身体を通した経験を基につくられていきます。遊びの機会と場を大事にしてほしいのですが、塾や習い事のために遊ぶ経験が減ってきています。そのため、中学生や高校生になって友だちとの関わりをうまく結ぶことができず苦しむ人が多いのです。
 環境が変わった新しい場で、自分の方から積極的に友達に働きかけていくことは大変です。そこで、中学や高校では新入生を迎えるとホームルームで、自己紹介やゲームなどを行って、「友だちづくり」と「クラスの人間関係づくり」を行うところが多いです。しかし、それでも友達ができずに「ぼっち(ひとりぼっち)」だと嘆く人たちがいます。
 「私はうまく人と話せないので親しい友達もいません。でも先日、ホームルームで1時間レクリエーションをしたら、話しかけてくれる友達ができたのです。その人のおかげで、独りじゃないって思えて、学校に来ることができるようになったんです」と、欠席が続くためにカウンセリングをしていた生徒が話してくれました。
 話のできる友達がいる―。このことが、この生徒を学校に戻す大きな役割を果たしてくれました。遊びは子どもを大人に変える宝の箱です。思春期に入る前に、子ども同士で存分遊んでおいてほしいと、思春期に苦しんでいる子たちを見ていて思います。
 (蔭山昌弘・スクールカウンセラー=静岡市葵区)

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