大自在(10月26日)コピー

 毎朝、職場で各紙に目を通し、気になる記事はコピーして取っておく。これをしないと落ち着かないというか、一日が始まらない。一種の“職業病”のようなものか。
 この結果が、机上や周囲の紙資料の山。先日、職場のフロア内の模様替え、配置換えに合わせてだいぶ廃棄したが、それでも大量だ。
 「いつか役立つ」と思うから捨てられない。テーマごとに資料のおおよその「位置」は把握しているが、いざ必要になった時は大概、“発掘作業”をすることになる。捜しながら一体、どれだけの時間を費やしているのだろうかと、思わず苦笑してしまう。
 デジタルスキルの無さが理由の一つであることは間違いない。端末を使いこなせれば、必要な情報を要領良く取り出したり、整理して保管したりすることもできるのだろう。長年の習慣に安住していると言われればそれまでだが、紙の資料が手元にある安心感は何物にも代えがたい。
 エネルギー価格の高騰や円安による紙の値上がり、環境保全への意識の高まりなどから多くの企業がペーパーレス化に取り組んでいる。紙の山には複雑な思いもあるが、調べ物では「一覧性」が高く、必要な箇所を行き来しやすい紙資料の便利さも実感する。
 新型コロナウイルスワクチン開発の基礎を築き、今年のノーベル生理学・医学賞に決まった米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授とドリュー・ワイスマン教授。2人はコピー機の前で順番待ちしている時に偶然出会い、共同研究に結び付いた。コピーではこんな素晴らしいことも起きる。

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