⚽負傷も不遇も涙も越えて ジュビロ磐田MF金子翔太 決意の「静岡サバイバル」 J2残すは3試合
J2磐田のMF金子翔太(28)=JFAアカデミー福島出=が、J1昇格が懸かる勝負の最終盤戦へ牙を研いでいる。9月16日の山口戦以来、公式戦から遠ざかるが「残り試合で切り替えて必ずチームの力になる」。腐ることなく練習の先頭に立ち献身的にチームを支え、虎視眈々(たんたん)と出番を待つ。
思い入れが人一倍だった7日の古巣清水との静岡ダービーはベンチ外だった。「目標にしていた試合。やるせない気持ちになった」。5月に左もも裏の故障で1カ月離脱したが、夏場の11戦負けなし時は主にトップ下に君臨し、自在に動き回った。だが、同ポジションのMF山田大記が故障から戻ると、ピッチから遠ざかった。
練習試合では、2列目右サイドに入り、懸命に生き残りの道を探している。プロ10年間で何度もメンバーを外れたことはあった。それでも最後にポジションを奪い返したという強烈な自負がある。「分かりやすいプレーは少ないかもしれないが、最終的にこの選手が必要と思われたい」
2021年夏、7年半在籍した清水から磐田に加入。県内のライバルチームに移り、“禁断の移籍”とささやかれた。当時の清水はスペイン人監督が指揮を執り、出場機会が激減していた。「何か変えなきゃと思ったタイミング」で宿敵から熱烈なオファーがあった。想像以上の評価を受けたのが素直にうれしかった。
だが、現実は予想以上に厳しかった。磐田へ完全移籍後、初めて迎えた22年2月の静岡ダービー。顔なじみだった清水サポーターから猛烈なブーイングを受けた。「SNSで辛辣(しんらつ)なメッセージはあったが、実際にこのクラブ間の移籍がタブーだと実感した」。こみ上げる感情を抑えることができず涙を流した。
当時J2だった清水在籍時の16年11月、敵地で徳島を相手に途中出場し決勝点を奪い、J1復帰を決めた。ここぞの勝負強さには定評がある。残り3試合。「ここからがチームにとっても自分にとっても大一番」。J1昇格のために、この男の力が必要な場面が巡ってきそうだ。
金子翔太(かねこ・しょうた)
1995年5月2日生まれ。栃木県宇都宮市出身。JFAアカデミー福島を経て2014年清水入り。21年に期限付き移籍で磐田に加入し、22年に完全移籍。J1通算158試合に出場し23得点。28歳。