浜岡原発 基準地震動了承 議論9年、再稼働審査が前進 原子力規制委

 原子力規制委員会は29日に開いた中部電力浜岡原発(御前崎市佐倉)の新規制基準適合性確認審査会合で、中部電力が策定した「基準地震動」(耐震設計の目安となる最大の揺れ)を了承した。建屋や設備などプラント審査の前提となる数値で、再稼働に向けた主要論点の一つとして約9年、議論が続いていた。今後は津波対策の目安となる「基準津波」の審査に焦点が移る。

浜岡原発
浜岡原発

 揺れの大きさを示す最大加速度は、1~4号機周辺で1200ガル、5号機周辺で2000ガルとした。5号機の地下には、地震の揺れを増幅させる「低速度層」があると確認されていて、影響を踏まえて二つの基準地震動を設定した。中電によると、全国の原発の基準地震動の中でも高い数値になる。
 中電はこれまでの会合で、浜岡原発周辺で発生する可能性がある、プレート間(南海トラフ)▽海洋プレート内▽内陸地殻内(活断層)の三つの地震タイプごとに地震動を算出してきた。加えて、過去に起きた地震を基に全国共通で考慮すべき地震動についても評価。揺れの大きさを比較し、用いる基準地震動の根拠を説明してきた。
 今回の会合では、それらの議論をとりまとめた資料を提出し、規制委の石渡明委員は「妥当な検討がなされている」と評価した。中電の天野智之原子力土建部長は会合終了後の取材に「基準津波も決められるようしっかり説明したい。今回の決定で、プラント審査の準備も前に進めていける」と述べた。
 (東京支社・山下奈津美)

 【解説】重要論点 まだ残る
 中部電力浜岡原発の新規制基準審査で、原子力規制委員会が耐震設計の目安となる「基準地震動」を了承した。審査開始から9年で迎えた一つの節目だが、全体で見ればようやく最初の山を越えた段階だ。
 基準地震動の議論に時間がかかったのは、浜岡の立地場所の特殊性が一因。将来的に巨大地震を引き起こす可能性がある南海トラフに面しているため、他の原発と比べても評価作業の量は膨大になり、規制委側も慎重に検討を重ねてきた。
 中電は基準地震動の決定を「大きな前進」と受け止める。ただ、自然ハザード(危険性)分野の審査では、津波と敷地内断層の活動性評価といった重要な論点がまだ残っている。
 特に「活断層ではない」と活動性を否定できなければ廃炉を迫られる断層の評価は依然、難航している。こうした課題を着実に乗り越えていかなければ、再稼働への道筋は見えてこない。
 (東京支社・関本豪)

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