軽くて簡素 実戦向き甲冑 久能山東照宮博物館「金陀美具足」【コレクションから⑭】

久能山東照宮博物館「金陀美具足」(16~17世紀)製作者不明
久能山東照宮博物館「金陀美具足」(16~17世紀)製作者不明

 織田がつき羽柴がこねし天下餅すわりしままに食うは徳川
 この歌は織田信長公、豊臣秀吉公、徳川家康公の天下取りを表現したもので、家康公とは地味で、狸親父[たぬきおやじ]というイメージがある。しかし今年はドラマの影響から旧来のイメージ像とはずいぶん変わってきているように感じる。
 家康公所用品の中でも特に注目されているのが、「金陀美具足[きんだみぐそく]」である。製作年代には議論があるが、社伝によると、永禄3(1560)年、桶狭間合戦の前哨戦である大高城の兵糧入れにて使用した甲冑[かっちゅう]とされている。
 江戸時代には、紅葉山神庫(江戸城内東照宮の御神宝蔵)に家康公ゆかりの宝物と共に納められ、明治時代に徳川宗家より奉納後、当宮の神職が甲冑の由緒を書き留めたことで世間に知られるようになった。家康公が甲冑を使用したとされる当時の資料は無いが、江戸時代後期には初陣の際に使用されたものと記載されていた。甲冑の重量は約12キロと歴代将軍の中でも軽量で、見た目とは違い簡素な作りは実戦向きの甲冑と言えるだろう。
 私たちの人生も「どうする」という選択の連続である。天下泰平を成し遂げた家康公が若き頃に思い描いた夢を、この金陀美具足から想像するのはいかがだろうか。
 (戸塚直史・久能山東照宮権禰宜、同博物館学芸課長)

メモ
 静岡市駿河区根古屋390<電054(237)2437>
 「金陀美具足」は、11月26日まで開催中の「徳川歴代将軍名宝展」に出品されている。

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