楕円球がつなぐ縁【2023ラグビーW杯フランス大会】

 楕円(だえん)球がつなぐ縁がある。

日本―イングランド戦を観戦に訪れた現地の人々=フランス・ニース
日本―イングランド戦を観戦に訪れた現地の人々=フランス・ニース
ラガマルくんと記念撮影する渥美さん=フランス・ニース
ラガマルくんと記念撮影する渥美さん=フランス・ニース
日本―イングランド戦を観戦に訪れた現地の人々=フランス・ニース
ラガマルくんと記念撮影する渥美さん=フランス・ニース

 日本対イングランド戦の会場となったスタット・ド・ニースは、キックオフ前から大勢のファンの期待感と熱気に包まれていた。その中で、ひときわ目立っていたのが国籍を超えた人と人との交流。言葉や歌で、互いの健闘をたたえ合う。至るところで両チームのジャージーが交じった記念撮影が行われるのも、国際大会ならではの温かな光景だ。
 そこに、「4年前、ラグビーのとりこになった」という一人の女性がいた。磐田市在住の渥美典子さんは、2019年の日本大会の際、「地元で世界的なイベントが開催されるチャンスはめったにない」とエコパでのボランティアに参加。大会運営を通して世界各国から集まる人々と触れ合い、より身近にW杯を体感したことで「世界が変わった」。大会後は静岡ブルーレヴズ公式ボランティアのレヴズクルーに所属し、現在も活動を続けている。
 今回、渡仏を決断したのは「4年前、せっかく日本中が盛り上がったのにコロナ禍でいろいろな制限ができてしまった。いつ何が起こるか分からない。応援できるときに現地に行こう」という思いから。日本代表が勝ち続ける限り、スタンドからエールを送ると決めている。
 渥美さんはニースのスタジアムでも、試合前から大活躍だった。日本のラグビーファンから人気を集めるマスコット、ラガマルくんと写真を撮ろうと列をなす各国の人たちを、柔らかな笑顔で誘導。仕事でもなくとっさに取った行動だったが、これまでのボランティア経験が異国の地でも生かされた。皆がにこやかに撮影している姿がうれしかった。
 4年前に魅了されたラグビー。フランスでの出会いや経験もまた、楕円球がつないでくれた生涯の宝物だ。
(スポーツライター・藤原志織)

 

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