人間力 高める機会に 仲間と切磋琢磨 SPAC演劇アカデミー夏期講座

 世界で活躍する演劇人の育成を目指して、静岡県舞台芸術センター(SPAC)が高校生を指導する1年制の演劇塾「SPAC演劇アカデミー」。劇団スタッフが実技だけでなく、小論文や英語なども教えることで、俳優養成の枠にとどまらず受講生の人間力を高める機会となっている。日頃はオンラインでの講義も多い中、夏期講座は県内各地の受講生が集まり、切磋琢磨[せっさたくま]する。7月下旬に5日間の日程で行われた講座をのぞいた。

「理想の学校」をテーマに書いた小論文を読み上げる受講生=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
「理想の学校」をテーマに書いた小論文を読み上げる受講生=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
ソロパフォーマンスを披露する受講生=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
ソロパフォーマンスを披露する受講生=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
「理想の学校」をテーマに書いた小論文を読み上げる受講生=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
ソロパフォーマンスを披露する受講生=静岡市駿河区の静岡芸術劇場


 「ネガティブな内容がポジティブな表現になって、新しい見方ができた」「具体例があり共感できる」-。SPACの活動拠点である静岡芸術劇場(静岡市駿河区)の舞台上で、受講生がそれぞれの小論文に感想を述べ合っていた。
 夏期講座の小論文のテーマは「理想の学校」。講座の初日に受講生が「他人のキャリアデザインをするのは楽しそう」と話すのを聞いたSPAC文芸部の演出家大岡淳さんが、まずそれぞれが文章を書き、その後、他人の文章を読み論点を変えずに書き換えるという方法を採用した。大岡さんは「自分は何者であるかという輪郭が見えていること、物事を客観視して、では自分はどうするかと考え、表現できることは他者を演じる演劇では重要」と狙いを説明した。
 講座では期間中に1人2分間のソロパフォーマンスを完成させる。入塾時から学ぶ、俳優が日頃行う歩行訓練や呼吸法などを生かした身体表現に加え、伝えたい言葉や音楽、小道具なども1人で考える。毎日発表し、俳優寺内亜矢子さんや他の受講生からの意見を踏まえて改善する作業を繰り返す。最終日に、谷川俊太郎さんの詩の一節を取り入れてパフォーマンスを披露した内藤心海さん(クラーク記念国際高2年)は「小さな動作で視線を集められるか挑戦してみた。人前で演技するのは初めてだったが、もらったアドバイスを取り入れていくと緊張せず、集中できた」と充実した表情を見せた。
 アカデミーは3期目で、活動は4月から来年3月までの約120日間。今年は、将来演劇に関わる仕事がしたい、自己表現の仕方を学びたい-など、さまざまな目的を持って16人が入塾した。寺内さんは「多様なものの見方や考え方を学び、互いを認め合って自由に意見交換する経験は、演劇に限らず人生のあらゆる面で生かせる」と意義を語った。3期生の成果発表会は来年3月に開かれる。
 (教育文化部・鈴木明芽)

 

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