記者コラム「清流」 迂回路と呼べるのか

 行きに歩いて通ったはずの道が帰りにない。島田市川根町笹間地区での出来事だ。梅雨前線と台風2号の接近に伴う6月初旬の大雨で、地域住民の生命線である県道が崩落した。
 翌日は迂回(うかい)路を使った。沢からは水が噴き出し、大量の落石で未舗装のようになった道。ガードレールはあちこちで突き破られ、ぼろぼろになっていた。鋭利な石はタイヤをパンクさせるという。携帯電話は圏外、カーナビがルートとして認識しないことにも不安が募る。「土砂崩れが発生すれば、命はないのでは」と思ったが、高齢者が運転する車と何度かすれ違った。
 幸い数日で県道は復旧したが、あの道をもう一度使う気力が湧いてこなかった自分がいた。果たしてあの日のあの道を迂回路と呼んでよかったのだろうか。
(島田支局・寺田将人)

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