農福連携へハーブ栽培 静岡の障害者就労支援事業所 生産緑地を活用

 障害者就労継続支援B型事業所のニュートラル(静岡市駿河区敷地)は、IoT(モノのインターネット)技術を活用した養液栽培によるハーブ生産を手がけている。障害者の就労機会と農作業の担い手確保を両立する「農福連携」の取り組み。同区高松の施設でベトナム料理に用いられるパクチーファランの安定生産を目指す。

砂で栽培されるパクチーファラン。水や液肥を灌水して育てる=5月下旬、静岡市駿河区高松
砂で栽培されるパクチーファラン。水や液肥を灌水して育てる=5月下旬、静岡市駿河区高松

 同事業所では知的障害などの利用者が軽作業に従事する。工賃向上や安定して作業できる現場の確保を図る中で、2020年から経営に携わる鍬竹教男代表は農福連携に着目した。
 浜松市内のベトナム人向け食材店の要望を受けてパクチーファランを生産品目に選び、持続可能な栽培形態を模索。東レ建設(大阪市)が展開する高床式の屋内栽培設備「トレファーム」での試験生産に成功した。住宅街の一角の生産緑地を借り受け、生産体制を整えて22年、栽培開始にこぎつけた。
 トレファームは水はけが良い砂に種苗を植え、システム管理で水や液肥を自動で灌水[かんすい]して育てる。特別な農機具を必要とせず、腰の高さに植えるため、車いすでも作業可能。利用者は週1回の頻度で収穫や園地の手入れといった作業にあたっている。鍬竹代表は「ノルマに追われずにじっくり作業してほしい」と話す。
 栽培の道のりは平たんではなく、冬場には病害に見舞われたこともあった。ただ、各地でベトナム料理店が増加傾向にあることなどからパクチーファランの引き合いは強く、安定需要を見込む。
 今後は特別支援学校からの見学受け入れなども行う方針で、鍬竹代表は「希少性の高い品目を作る農福連携の取り組みとして継続させたい」と語る。

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