駿河湾の海水から水素を 沼津の企業、東海大、清水銀が生成プロジェクト始動 脱炭素へ国産化促進目指す

 冷却装置製造のエイディーディー(ADD、沼津市)、東海大工学部、清水銀行は本年度、駿河湾の海水を電気分解して水素を生成するプロジェクトをスタートさせる。水素の国産化促進と温室効果ガス削減の両立を目指す。化石燃料を使わない究極の次世代エネルギーとして、水素商用化の開発競争が世界的に進む中、同湾を舞台に水素循環システム構築に取り組む。

海水電気分解による水素生成のイメージ図
海水電気分解による水素生成のイメージ図

 ADDの下田一喜社長は、三者連携で今後3年間の技術研究を進め、2030年代に長時間稼働できるプラント試験機の実用化を目指すとしている。
 真水の電気分解で水素を商業生産する企業は一定数あるが、海水からの水素生成は技術的に難しく、国内外で実用化に向けた技術研究が続く。
 清水銀の仲介でADD独自のダイヤモンド電極製造技術を知った東海大工学部の研究者グループが、海水電気分解への活用を提案した。白金などの金属電極に比べて高い耐腐食性を持つダイヤモンド電極の特性を生かし、同大の水素研究の技術知見を取り入れながら、高効率な水素生成技術を研究する。
 清水銀と同大工学部は3月末までに、地域中小企業の技術ニーズと同大の研究シーズをマッチングさせる連携協定を締結。ADDの案件が第1号事業となり、3者で共同研究契約を結んだ。神奈川県平塚市の同学部での調印式で、清水銀の岩山靖宏頭取は「海水からの水素生成は海のまち清水にとっても、日本全体にも大きなテーマ。まず今回の事業を実現に導き、本県ものづくり企業の飛躍につなげたい」と語った。
 当面は電極の性能向上や、電気分解時に発生する塩素の処理といった技術課題の検討を急ぐ。下田社長は「2050年のカーボンニュートラル、グリーン社会の実現に水素利用は避けて通れない。製造だけでなく、貯蔵、輸送、発電、需要開拓など水素循環サイクル構築への道のりは長いが、多くの人との連携で静岡ブランド水素の地産地消に挑みたい」と意欲を示す。

 <メモ>水素は製法別に、化石燃料から取り出す「グレー水素」、製造過程で生じる二酸化炭素(CO2)を回収する「ブルー水素」、再生可能エネルギーで水を電気分解する「グリーン水素」に大別される。政府は2020年策定の「グリーン成長戦略」で、水素をカーボンニュートラル達成のキーテクノロジーと位置付け、欧州企業が先行するとされる水電解装置の国際競争力強化、グリーン水素の導入増を目指す。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞