「聞こえ」を文字でサポート 要約筆記者の活動発信 永井さん親子(島田市) 難聴の実情、動画で解説

 島田市の要約筆記サークル「うさぎ」に所属する永井納子[なおこ]さん(63)、結子さん(29)親子が、難聴の実情や文字で情報を伝えて難聴者を支える要約筆記者の活動を広く知ってもらおうと、動画や交流サイト(SNS)を活用した情報発信に力を入れている。昨年末には結子さんが制作した難聴に関する動画を市公式LINEで公開した。2人は「難聴への理解が広がり、困っている誰かの助けにつながればうれしい」と願う。

難聴について分かりやすく解説する動画を制作した永井結子さん(左)。納子さん(中央)らと要約筆記の普及にも励む=1月下旬、島田市内
難聴について分かりやすく解説する動画を制作した永井結子さん(左)。納子さん(中央)らと要約筆記の普及にも励む=1月下旬、島田市内

 「ふくしのいっぽ」と題した5分弱の動画は、聴覚障害のある子どもと妖精「ノッカ」が会話しながら、難聴の種類によって聞こえ方が異なることや、声で会話が可能なため障害が周囲に理解されにくいことなどを紹介している。動画を制作した狙いについて結子さんは「『耳が聞こえない=手話』と考える人が多いが、難聴者の多くは手話を使っていない。まずは実情を知ってほしいと考えた」と話す。
 2人は同サークルの要約筆記者が長年一人だったことを受けて2020年に加入し、21年2月の認定試験に合格した。当時は新型コロナの影響で要約筆記者の派遣が激減。思うような活動ができない中でフェイスブックを使った情報発信を開始し、動画の公開に至った。
 同サークルが本年度3回実施した啓発講座でも動画を流し、夏休み期間には中高生のボランティア体験と連動するなど若い世代へのアプローチにも力を入れる。サークルの会員で補聴器を使う小沢房子さん(74)は「大事なことを聞き落としていることもあり、要約筆記はとても重要。永井さん親子の活動は頼もしい」と期待を寄せる。
 納子さんは要約筆記の認知度が低いことについて「難聴であることを言いたくない人もいる。『聞こえにくい』ことのつらさは外から分かりにくい」と指摘する。今後は当事者のインタビューを含めた動画を制作する意向で、2人は「年齢を重ねれば誰でも聴力は低下する。要約筆記が手話のように当たり前に認知されてほしい」と話している。

静岡県内登録者 徐々に減少
 県聴覚障害者情報センター(静岡市葵区)によると、県内に登録のある要約筆記者は2021年度末で113人。16年度末時点は120人だったが徐々に減少している。同センターの担当者は「新規登録者はいるものの、年齢などを理由に活動を辞退する人も同数以上いるため、数が増えない状態が続いている」と説明する。
 要約筆記者の派遣は障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業として市町(広域の場合などは県)が行うが、県内では東部・伊豆地域を中心に7市町が派遣を実施していない。支援者の育成が進まず体制が整っていないことや、利用者の把握ができていないなどの理由があるという。
 要約筆記 話の内容を要約しながらその場で文字にして伝える筆記通訳で、主に手話を使わない聴覚障害者や中途失聴難聴者などに伝達する。手書きとパソコンの2種類があり、県や政令市が主催する養成講座の修了者は要約筆記者認定試験を受験し、合格後に各市町から派遣される形で活動する。

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