大自在(2月9日)「おれおれ詐欺」

 息子や孫を装って高齢者から現金をだまし取る「おれおれ詐欺」という言葉が使われ始めたのは20年前。本紙の紙面には2003年6月に初めて登場した。その後、手口は多様化、巧妙化し、おれおれ詐欺は特殊詐欺といわれる犯罪形態の一つになった。
 ただ、この古典的手口による被害は相変わらず多い。昨年、県内で発生した特殊詐欺被害417件のほぼ3割を占める。被害総額は4億円を超えている。
 警察は手口を周知し、注意を喚起する。現金の振込先になる金融機関やコンビニ店は被害防止に大きく貢献している。それでも、被害は後を絶たない。犯行グループはあの手この手で隙を突いてくる。
 検挙に勝る防犯なし―と、警察は「だまされたふり作戦」の協力を求める。不審な電話と気付いた後もそのまま会話を続けて警察に通報し、犯人逮捕につながった事例は本紙でも何度となく紹介されている。だが、詐欺を見破ったとしても油断は禁物だ。作戦を逆手に取られ、偽警察官に現金を取られる被害も起きている。
 「おれおれ」という言葉から詐欺電話をかけてくるのは男だと先入観を持ってはならない。昨年、熊本県内では方言を使って娘になりすます不審電話が相次いだという。
 20年前には「自分は絶対にだまされない」と思っていた人も、幼かった子どもや孫が成人となり、詐欺の標的になるかもしれない。社会に不安を与えた広域強盗事件では特殊詐欺にも捜査のメスが入るが、犯行グループは他にも多く存在する。やはり自分の貴重な財産は自分で守るしかない。

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