高齢者のごみ出し支援 富士宮の協議体が市に提言 地域社会再構築へ一歩【解説・主張しずおか】

 高齢者のごみ出し支援をテーマに議論を重ねてきた富士宮市地域支え合いプロジェクト第一層協議体が自助や互助、共助、公助の在り方を整理し提言書にまとめた。2015年の改正介護保険法施行を受けた取り組みの一環。地域での助け合いだけでは限界がある中、公的支援に依存しない地域社会の再構築に向けた新たな一歩となることを期待したい。

ごみ出し支援の提言書を提出する協議体関係者ら=2022年11月、富士宮市役所
ごみ出し支援の提言書を提出する協議体関係者ら=2022年11月、富士宮市役所

 国は15年施行の改正法で介護予防や生活支援サービスの一部を住民主体にシフトさせる方向性などを示した。市は16年に自治会や福祉関係者、民間企業などと協議体を組織し、高齢者の困り事やニーズを掘り起こし、仕組みの模索を続けている。市福祉企画課の稲垣康次課長は「自助、互助、共助、公助を組み合わせて支援策を考えていくことが重要」と協議体が担う意義を語る。
 協議体が最初に取りかかったテーマが「ごみ出し支援」だった。21年度から検討をスタートし、地区を定めて地元関係者が集まったワークショップで具体策を洗い出した。2カ月間の戸別回収のテストを経て22年末までに提言書をまとめた。
 協議体の武井信夫副委員長は「ごみ袋には生活の歴史が詰まってしまっているため、近所には頼みにくい。プライバシーの問題も多く含んでいる。負担が数人に偏ってしまい長くは続かない。善意で始めたことがつらくなってしまう」と仕組み化の必要性を語った。提言書では、共助・互助について地域ごとに有償の支え合い活動の仕組み化を検討し、利用者の負担を原則とすることのほか、公助に対しては認定基準を設けた対象世帯への戸別回収の検討などを提案する内容となった。
 提言書を受け、市は公助対象者の実態把握を重ねて、24年度からスタートする次期介護保険事業計画への反映を目指す。協議体は各地区での具体的な運用を模索し、全市的な取り組みに広げていく。
 少子高齢化社会の急速な進展とともに、福祉や地域の担い手不足が指摘される中、地域社会の再構築を目指す取り組みは、介護保険制度の維持に限らず、誰もが住み慣れた地域で自分らしく生き続けられることにつながる。地域住民や関係機関、団体が集まって議論してまとめた提言書の内容を広げていくためには、地域ごとのニーズを前提にした具体的なサービスを創出し、見せていく取り組みも欠かせない。

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