大自在(12月13日)今年の色

 今年の漢字が「戦」に決まった。では今年の色は何か。真っ先に浮かんだのは青と黄。ウクライナの国旗を構成する二色をたびたび目にする一年だった。上に配した青は空、下の黄色は小麦畑を象徴するという。
 肥沃[ひよく]な土壌に恵まれ、「欧州の穀倉地帯」と呼ばれる国にふさわしいデザインと本来なら感じたはず。豊かなイメージとは裏腹にこの一年、青と黄色の組み合わせは「抵抗」「反戦」の印となった。
 ウクライナへの侵攻後、ロシア国内では公園の柵や公衆電話に緑色のリボンがくくりつけられるようになったとも聞く。反戦を声に出せない人々による“小さな抵抗”を意味していると8月15日付本紙にあった。「戦禍の民 しずおか戦後77年とウクライナ」と題した連載の最終回、県内在住のロシア出身者に取材した内容だった。
 沼津西高2年の長倉咲和さんは緑色のリボンに「なぜそんなまわりくどい方法で」と疑問を持った。だが記事を読み、さらに調べるとロシアの現実が見えてきた。無言の抗議ですら身柄拘束の危険があると。
 日本にも戦争に反対すれば「非国民」と呼ばれた時代があった。でも過去のこと。同じことが起こるわけがない―。そう思っていたが、ロシアの今、緑色のリボンに込められた意志を知り、疑問は敬意に変わる。
 本年度「しずおか新聞感想文コンクール」最優秀の一作に選ばれた作品の締めくくりで、長倉さんは「おかしいと思うことにおかしいと言い続けられる自分でいたい」と願う。青と黄が混ざってできる緑色もまた、今年の色に加えたい。

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