名酒初亀に自社田米 藤枝・岡部朝比奈 地元産素材の使用加速

 数々の受賞で知られる日本酒「初亀」をつくる初亀醸造(藤枝市岡部町)はこのほど、同町朝比奈地区に今年初めて設けた自社田で酒米を収穫した。同社は近年、自社田の導入のほか、同地区の契約農家とも協力して酒米の栽培量を増やしていて、地元の素材を生かした酒づくりを加速させている。

酒米の生育を確認する橋本康弘専務(左)と杉野裕基さん=10月中旬、藤枝市岡部町朝比奈地区
酒米の生育を確認する橋本康弘専務(左)と杉野裕基さん=10月中旬、藤枝市岡部町朝比奈地区


 「自分で育てた米から日本酒が完成すると思うとうれしい」。今春に自社田の管理責任者になった杉野裕基さん(38)は10月中旬、収穫期を迎えて黄金色に染まった田んぼを見つめた。「まだまだ分からないことだらけだが、周囲の農家と協力して栽培技術を向上させたい」と意気込む。
 栽培するのは本県オリジナル品種の「誉富士」。同社は20年ほど前から同地区で酒米づくりをしてきたが、本格化させたのは2017年ごろから。契約農家数を増やしたほか、自社田も拡大していく方針だ。現在は契約農家と自社田を合わせて約300アールの栽培面積があり、醸造の総使用量に占める県産米の割合も3~4割まで拡大した。
 同社は、静岡の食材を引き立たせる「ドライですっきりとした味わい」を目標としている。橋本康弘専務は「酒づくりは地域の自然と密接に結び付いている」と語り、食材と近い環境で育まれた素材をなるべく多く使う方針を掲げる。
 中山間地にあり、昼夜の寒暖差が大きい同地区は玉露の日本三大産地の一つ。お茶づくりに適した気候は酒米栽培にも向いていて、粒の張りが良くなるという。会社近くでの酒米栽培は耕作放棄地の解消にもなり、農業や風景を守ることにもつながる。いずれは収穫量を増やし、朝比奈産酒米のブランド化も視野に入れる橋本専務。「地域に元気や喜びを与えられる形の酒づくりが理想」と先を見据える。

 

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