インストラクター協会過渡期 多様な入れ方探究、提案【令和の静岡茶⑰/第5章 茶文化新考①】

 おいしい茶の入れ方の参考指針を半世紀ぶり改定へ-。8月、静岡茶市場(静岡市葵区)に集まった日本茶鑑定士らは、湯温や浸出時間などの組み合わせを数十通り試し、煎茶や玉露の香りや滋味などを評価した。

静岡茶市場で行われたデータ収集作業。茶の香りや化学成分を分析する=8月、静岡市葵区
静岡茶市場で行われたデータ収集作業。茶の香りや化学成分を分析する=8月、静岡市葵区

 お茶の指導者資格「日本茶インストラクター」の育成や認定を担う日本茶インストラクター協会(東京)は、緑茶の標準的な入れ方の探究に向け、データ分析を進めている。
 現在の入れ方の基礎である1973年発行の学会誌「茶業研究報告」によると、「煎茶(上)は70度で120秒浸出」。品種や仕上げ茶が多様化する現代に合わせ、これら当時の感覚を見直す。
 静岡大の協力を得てカテキンやアミノ酸含有量といった化学面も分析する。評価結果を基に、インストラクター認定試験のテキストを刷新するという。
 消費者の嗜好(しこう)が変わる中、新たに物差しを示す理由とは。事業に携わる県立大茶学総合研究センター(静岡市駿河区)の中村順行さん(69)は「従来は茶のおいしさをうま味重視で考えてきた。香りや渋みなど多様な要素を踏まえた入れ方を示すことで、現場での応用にもつながる」と説く。
 2000年に設立された同協会は茶文化の継承や普及を理念に掲げ、02年にNPO化した。各地で四季折々に合わせた茶を紹介する催しや教育機関での出前授業を展開するなど、茶文化発信への貢献は計り知れない。
 ただ、協会は20年の時を経て過渡期にある。県内のベテラン会員は「認定試験は茶の歴史や成分など知識重視の面がある。堅苦しく考えず、お茶の魅力を伝えたい」と話す。
 インストラクター1期生の前田冨佐男さん(63)=前田金三郎商店代表=は、今年著した「日本茶の実践マーケティング」(キクロス出版)でワインのソムリエを引き合いに出しつつ、インストラクターの役割を考えた。今後の発展に向け「マーケティング感覚を磨く必要がある。消費者が暮らしの中でどのように飲むと良いのかを提案する力が求められている」と強調する。
 全国に広がる認定インストラクター数は約5千人。地方の垣根を越えた、多面的な魅力発信が期待されている。
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 茶の楽しみ方が多様化している。グローバル化やライフスタイル変容に直面する現代の「いっぷくの風景」を考える。

 日本茶インストラクター認定試験 筆記と実技の2段階で年1回実施し、茶の栽培・製造や鑑定技術など多岐にわたる知識・技能を問う。会員は各地の支部に所属し、提案技術を生かして日本茶教室を開いたり、カフェ開業などにつなげたりしている。

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