食品ロス「残さない」の輪 広げる【SDGs 1.5℃の約束①】

 地球温暖化が自然環境にさまざまな影響を及ぼしている。要因とされるのは、人間の活動で排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの増加。国際社会は「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5度に抑える」と目標を定めた。国や県も「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロ」を掲げる。気温上昇を今すぐ止めるため、私たちは何をすればいいのか。暮らしの中で行動する人たちの姿を追い、そのヒントを探った。

世界の水産資源や農業について伝える「ランチオン」の弁当箱用の帯
世界の水産資源や農業について伝える「ランチオン」の弁当箱用の帯
環境に配慮した弁当に思いをのせて食品ロス削減に取り組む青木哲人さん=静岡市葵区
環境に配慮した弁当に思いをのせて食品ロス削減に取り組む青木哲人さん=静岡市葵区
世界の水産資源や農業について伝える「ランチオン」の弁当箱用の帯
環境に配慮した弁当に思いをのせて食品ロス削減に取り組む青木哲人さん=静岡市葵区


 静岡市葵区の駒形通り商店街。この地で約40年前から八百屋を営む青木青果の3代目青木哲人さん(43)は、環境への負荷が少ない仕出し弁当を市内で開かれる会議やワークショップ向けに製造・配達するブランド「ランチオン」を展開する。「日本人になじみ深い『お弁当』を通し、食と環境を考える機会を提供したい」と話す。
 弁当箱は紙製で食材は県産が中心。箱に巻く帯はバナナの繊維を使った再生紙で、世界の水産資源や農耕地に関するデータを堅苦しくないおしゃれなデザインであしらう。
 例えば「大豆ミートのもし丼」。動物性の食材と化学調味料を一切使わず、野菜が彩りよくたっぷりのる。帯には完食を促すフレーズや、「植物由来の料理しか食べない食生活に変わったら畜産業に関係する温室効果ガスは全体の14%に減る」といった情報をさりげなく載せている。「弁当を届けた時に、自分の思いを話す機会をいただけることもしばしば。帯はその時のレジュメにもなる」
 弁当の売り上げの一部を、自然保護団体を通して植林活動に寄付してもいる。「環境について語るとけげんな顔をされることもあるが、声を上げなければ何も変わらない。子どもたちの未来に住みよい環境を残したい。それだけが原動力」と語る。

「野菜のプロ」に聞く おいしい保存、調理のこつ

 野菜ソムリエ上級プロの遠山由美さん(静岡市葵区)に家庭の食品ロスを減らす野菜の保存法、調理の工夫を聞いた。


リンゴは輪切りにすると皮が気にならず廃棄を減らせる

 おいしいうちに食べ切るのが理想だが、保存する際は野菜の呼吸を抑え、栄養素の自家消費を減らすことが大事。原産地と畑での姿に注目し、温暖な国が原産の野菜は常温で保存する。アスパラガスなど立って育ったものは冷蔵庫でも立たせると長持ちする。
 野菜に合った水分保持も大切。乾燥を嫌うブロッコリーは根元にぬれたキッチンペーパーを巻いた状態で空気を入れたポリ袋へ。モヤシはつまようじで袋に1カ所穴を開け、通気を確保する。
 食べきれない時は迷わず冷凍。おひたしにする小松菜、鍋用のニラなどは、冷凍して細胞壁を壊すと栄養素が効果的に取れ、味もよくしみる。キノコ類も冷凍するとうま味成分が増す。
 食べられるのに捨てている部分も見直したい。ニンジンは皮むき不要。ゴボウは気になる汚れだけスプーンでこすり取る。果物ではリンゴの切り方を輪切りに変えるといい。廃棄量が減り、香りが良く栄養価が高い皮ごと味わえる。芯は型で抜くと子どもが喜ぶ。
 普段廃棄する切れ端(皮、ヘタ、根の周辺、玉ネギの薄皮など)は調理のたび、くず野菜専用の保存袋に入れて冷凍庫にストックし、両手山盛り程度にたまったら水1200cc、酒小さじ1を加えて約20分煮る。いろいろな料理に使えるベジブロス(野菜だし)ができる。

 <メモ>国内の2020年度の食品ロスは推計値で522万トン。国民1人当たり毎日茶わん1杯分のご飯を捨てている計算だ。内訳は一般家庭が47%で、このうち6割が野菜と果物。生ごみの焼却処分に伴い大量の温室効果ガスを生み出す。

 \チャレンジ/
 ■食品ロスに関心を持とう
 ■野菜はおいしいうちに食べ切る
 ■冷凍庫を上手に活用


 静岡新聞社はSDGメディア・コンパクトに加盟しています。

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