特別展「日本画で綴る 源氏物語 五十四帖展」 8日から浜松・秋野不矩美術館
現代作家描く因果と死生
浜松市秋野不矩美術館で10月8日、特別展「日本画で綴[つづ]る 源氏物語 五十四帖展」が開幕する。秋野不矩ら京都ゆかりの現代の日本画家が「源氏物語」の第1帖「桐壺」から第54帖「夢浮橋」までを題材に制作した54点が集う。作品は源氏物語の魅力と世界観を見事に描き出し、作家それぞれの手法や作風から、脈々と受け継がれてきた京都画壇の姿を垣間見ることができる。約千年前の王朝ロマンに思いをはせながら、情緒豊かな雅の世界に浸りたい。
情緒豊かな雅の世界
日本人に最も多く読まれ続け、日本文化の形成に深く影響を与えた「源氏物語」は、今から千年ほど前、紫式部が執筆した世界最古の長編小説である。
紫式部が紡いだ美しい言葉や文体、情景描写、感動的な主題、個性豊かな登場人物の波瀾[はらん]万丈なストーリー、印象深い名場面、鋭く豊かな洞察は大変魅力的である。また、五感に訴えるような表現は見事で、肌に触れる風の感触、木の葉の触れ合う音、恋文にたきしめられた香の漂うさまなど、その場にいるような空気感に引き込まれてしまう。物語の面白さのみならず、多様な日本文化の美に触れる表現は、世界に誇ることができる小説と言われるゆえんである。
この素晴らしい原典を絵画で表現した「源氏物語絵巻」は、物語が成立してから約150年後の12世紀に制作され、その後、各時代の名匠たちの手によってさまざまな表現がなされていることからも、古来よりわが国の美的インスピレーションの源泉となっていることが分かる。
今回展示する作品からも、平安京での貴族たちの暮らしぶりや習慣を垣間見たり四季折々の草花や自然の美しさを堪能したりできる。併せて、貴族の装束や仕えの者たちのまとっている着物から季節感や吉祥の表現にも着目していただきたい。
現代作家が捉えた源氏物語の底辺に流れる「繰り返す因果の妙、死生観、仏教信仰や浄土思想等」の時代的背景や特徴をどう表現しているのかも加味してご覧いただき、より豊かに54帖の世界観を味わってほしい。(鈴木英司・浜松市秋野不矩美術館長)
■会期 10月8日~11月27日
■会場 浜松市秋野不矩美術館(同市天竜区二俣町二俣130)
■開館 午前9時半~午後5時(入館は午後4時半まで)
■観覧料 一般800円、大学生・専門学校生・高校生500円、70歳以上400円、中学生以下無料
※団体料金あり
※障害者手帳等所持者および介護者1人は無料
■問い合わせ 同美術館<電053(922)0315>
主催 同美術館(公益財団法人浜松市文化振興財団)
共催 静岡新聞社・静岡放送