視覚障害者自立 街中で訓練 浜松のNPOが施設開設準備

 浜松市東区のNPO法人六星は、視覚障害者が日常生活を送るために必要な知識や技術を身に付ける施設を中区の中心街に開設する準備を進めている。施設責任者の宮本賢介さん(36)は「アクセスの良い場所に常設することで、障害者の社会参加の幅を広げたい」と意気込む。

視覚障害者が見やすいパソコン画面の設定方法などを学ぶリハビリ教室の参加者=7月下旬、浜松市中区鍛冶町のマルHビ
視覚障害者が見やすいパソコン画面の設定方法などを学ぶリハビリ教室の参加者=7月下旬、浜松市中区鍛冶町のマルHビ

 新施設は「ウイズかじまち」で、10月の開設を目指す。遠州鉄道新浜松駅から北へ約200メートル、鍛冶町交差点に近いマルHビル4階に入る。職員や外部講師が歩行訓練をはじめ、点字、パソコン、スマートフォンなどの生活訓練を行う予定。
 六星が同区で運営する視覚障害者支援施設「ウイズ蜆塚」の古橋友則施設長(45)は「新しい機能が続々と生まれるスマホなどの使い方を障害者が学べる場がほとんどなかった」と漏らす。こうした現状を打開するため新施設開設を決断した。
 だが、視覚障害の特性上、利用者の人数とほぼ同数の講師を確保する必要がある。マンツーマン態勢の確保という課題に対し、外部講師の協力を得つつ、当事者の気持ちを理解し、教えるスキルを持つ視覚障害者の育成にも取り組む方針だ。
 マルHビルでの生活訓練の本稼働に向け、これまでは浜松駅周辺の会議室などを借りて開催していた月1回のリハビリ教室を、同ビルで始めた。7月下旬の教室では利用者8人がパソコンのマウスポインターを画面に大きく表示する方法や、画面上の文字などを音声で読み上げるiPhone(アイフォーン)の「ボイスオーバー」機能を学んだ。
 視野がわずかしかなく白杖(はくじょう)を持って移動する同市北区の中村雅俊さん(60)は「初めて行く場所は段差などが分からず不安がある。交通の便利な場所に施設が常設されるのはありがたい」と期待する。

 ■デジタル化対応に苦慮
 NPO法人六星が浜松市中区の中心街に10月に開設する「ウイズかじまち」は障害福祉サービスの一つで、障害者の生活能力の維持や向上を目指す自立訓練(生活訓練)を手掛ける。県内では身体、知的、発達障害者などを対象に34施設(4月1日時点)が提供しているサービスだが、視覚障害者に特化した施設は珍しい。
 県視覚障害者協会の須藤正起会長(63)は、視覚障害者の多くが高齢の中途視覚障害者で、デジタル化への対応に課題を抱えていると指摘する。スマートフォンの操作をはじめ、商店のセルフレジやキャッシュレス決済などの対応に苦慮し、外出をためらう人は多い。新型コロナウイルス禍で周囲からの声掛けによる支援も減っているという。
 須藤会長は「健常者に理解を求めると同時に、障害者自らがスキルを身に付けることが欠かせない。アクセスの良い場所で、訓練ができる施設のニーズは高い」と期待する。

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