静岡人インタビュー「この人」 「あいぞめ珈琲店」の店長を務める 中野裕基さん(熱海市)

 大規模土石流に見舞われた熱海市伊豆山の住民をはじめ、伊豆山を思う人々をつなげようと、4月に開店した「あいぞめ珈琲店」を切り盛りする。店を運営するボランティア団体「テンカラセン」の副代表も務める。大阪府守口市出身。33歳。

中野裕基さん
中野裕基さん

 -熱海市とのつながりは。
 「もともとは何のゆかりもなかった。2年前に旅行で訪れた際に、熱海のまちづくり会社『マチモリ』がスタッフを募集していることを知ったのがきっかけ。地域に貢献できる仕事に興味があったので、すぐに移住して働こうと思い立った」
 -土石流発生後、どんな活動を続けてきたか。
 「当初は伊豆山の土地勘や人脈が全くなかったが、ひたすら高齢者宅などを回って、食料や水を届けた。見ず知らずの自分に対し、涙を流して感謝してくれる住民の姿を見て、さらに活動しなければとの思いが強くなり、現場で知り合った仲間と団体を立ち上げた」
 -あいぞめ珈琲店の存在は。
 「被災して日常を奪われた人や、伊豆山に住んでいても交流がなかった人、伊豆山を応援する人などさまざまな立場の人がつながれる場所。ここに来れば誰かに会える。家族や自宅を失って孤独を感じている人が外に出て、人と交流するきっかけを提供していきたい。住民のつながりは防災力強化につながる」
 -今後の抱負は。
 「土石流発生から1年が経過し、復興に向けて動きだしているが、被災者と行政の思いにはずれがある。だからこそ、自分たちが地域の声を聞き、行政に届ける存在になりたい。住民にとっても、行政にとっても『あいぞめ珈琲店に行けば、何かが分かる』と思ってもらえる店にしていきたい」


 

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