沼津「戸田港まつり」にウクライナ侵攻の余波 ロシア関連イベント見送り

 23日に3年ぶりに復活する沼津市戸田地区の夏の風物詩「戸田港まつり」がロシアによるウクライナ侵攻の余波を受けている。祭典のメインイベントで、交流のきっかけとなったロシアの軍艦ディアナ号乗組員の慰霊やパレードは、実行委がロシアの非人道的な攻撃を理由に中止を決めた。長い間続いていた地元の日ロ交流が岐路に立たされている。

プチャーチンやロシア兵に扮(ふん)して練り歩く「戸田港まつり」のパレードの様子=2018年7月、沼津市戸田
プチャーチンやロシア兵に扮(ふん)して練り歩く「戸田港まつり」のパレードの様子=2018年7月、沼津市戸田

 新型コロナウイルス禍でまつりが中止になる前までは例年、ディアナ号を率いたロシア使節プチャーチンやロシア水兵に扮(ふん)したロシア人、地元住民など100人以上が戸田港中央桟橋からプチャーチン・ロードを練り歩き、乗組員が宿舎としていた宝泉寺で慰霊祭を営んでいた。
 2018年には、ロシア上院議員や在日ロシア大使館員もまつりを訪問。実行委によると、今年2月にまつり開催を決めた直後にロシアの攻撃が始まったため、すぐにパレードと慰霊祭の中止を決めたという。
 同地区では小学校の授業でロシアと地元にまつわる歴史を学び、6年生が修学旅行で在日ロシア大使館を訪問するなど、住民レベルの交流が長年続いていた。まつり実行委役員の山田隆継さん(57)は「戸田の人間にとってロシアは子どもの頃から身近な存在。悲しいが、現状を踏まえると仕方ない」とため息をつく。
 今年はまつりのメインイベントを、花火の打ち上げに集約した。山田さんは「先人がロシア人と協力して日本初の洋式帆船『ヘダ号』を作ったことや、ロシアと交流があった歴史は変わらない。情勢が変われば再開したいが、それまで交流の歴史の風化をどう防ぐか考える必要がある」と交流史の継承を課題に挙げた。

<メモ>戸田とロシアの関わり 日本との国交交渉のため、1854年に下田に入港したロシア使節プチャーチン率いる軍艦ディアナ号は、安政の大地震で船体を破損、駿河湾で沈没した。母国に帰るため、ロシアの技術者と地元の船大工たちが総力を結集し、日本初の本格的な洋式帆船「ヘダ号」を完成させた。

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