熱海・逢初川上流の砂防規制拡大見送り 国の解説書に「地権者同意に努めて」記載、静岡県配慮か

 昨年7月、盛り土崩落に伴い土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川で1999年に砂防ダムが設置された際、国と県が盛り土などを規制する区域「砂防指定地」の指定をダム付近に限定し、上流全域の指定を見送っていた問題で、国土交通省が指定申請を担う都道府県向けの実務解説書で、指定時は地権者の同意取得に努めるよう求めていたことが、11日までに分かった。

 同省は取材に対し、法律上は同意が不要だが、運用面で必要との見解も示している。こうした同省の対応を踏まえて、県が指定に地権者の同意が必要だと判断していた可能性がある。
 国交省砂防部の監修で2001年に発行された解説書「砂防指定地実務ハンドブック」によると、「事前の同意は法的要件とはなっていない」とする一方で「一定の行為制限がかかることから、市町村等の協力も得つつ、同意が得られるよう努める必要がある」と記していた。
 県は1998年時点で地権者の同意が得られず、上流全域での規制を見送っていた。ある県関係者は、地権者同意を巡る国の方針に関し「流域を開発したい地権者がいれば、規制ができなくなる」と矛盾を指摘する。県砂防課の担当者も「一般論として、砂防指定地になると地価が下がることもあるので地権者が嫌がる」と話す。
 国交省砂防計画課の担当者は取材に、地権者同意を取得する「法的な義務はない」とした上で「私権制限がかかるので運用としては同意を取ってもらっていた」と説明した。
 熱海市伊豆山では、土石流危険渓流となっていた逢初川の上流域で地権者が乱開発を進めていた。2003年には無許可で宅地造成した地権者に県が工事停止命令を出し、09年ごろからは別の地権者が森林法に抵触しない範囲で盛り土を造成。市が県土採取等規制条例に基づき行政指導を繰り返したが、造成を止められなかった。

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