大自在(12月23日)放置竹林

 ラーメンにのる具の好みを言えば、メンマは上位に来る。子どもの頃、メンマをおなかいっぱい食べたいと思うことがあった。独特の風味と食感。「竹とタケノコの間のような不思議さ」にも引かれ、今に至っている。
 先日、「メンマ作戦 放置竹林“おいしく解決”」の本紙見出しが目に留まった。国産メンマ作りに取り組む本県など8県の企業・団体が全国組織を発足させたという。幼竹のメンマを商品化し、地域の竹害解消と雇用創出などを目指す。全国の「ご当地メンマ」をぜひ味わいたい。
 放置竹林は里山や農地を壊し、土砂災害のリスクを高めるなどとして全国で厄介者扱いされている。竹材としての利用が激減し、管理者の高齢化が進んでいることなどが背景にある。
 竹は古くから人々の生活に身近な存在だった。静岡市の登呂遺跡からは、竹を編んだとみられるざるが出土している。強い海風や砂を防ぎ編み目も美しい「沼津垣」や国の伝統的工芸品に指定されている「駿河竹千筋細工」などは、本県ならではの竹文化だ。
 祖父は竹籠職人だった。茶どころにあって、生茶葉を入れる籠を主に作っていたという。筆者が幼少時に亡くなったので職人姿は記憶にないが、母に聞いたら「あんたの汚れた布おしめを入れておく籠も作ってくれたよ」と笑った。
 メンマに限らず、放置竹林を“宝の山”に変えようという動きが各地で盛んだ。かぐや姫で知られる「竹取物語」の冒頭には、「(竹取の翁[おきな]は竹を)よろづのことに使ひけり」の一節がある。翁に負けず知恵を絞りたい。

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