ウクライナ兵士、交代で激戦地へ 民家拠点、死と背中合わせの日々

 ロシアが猛攻をかけ、激戦地となっているウクライナ東部ドネツク州の要衝チャソフヤール。ウクライナ軍兵士たちは戦場に近い村や町の民家に分散して拠点を築いて、交代で前線に派遣されている。死と背中合わせの兵士らがどのような日々を送っているのか。軍拠点で寝食を共にして、素顔の一端に触れた。

ウクライナ・ドネツク州チャソフヤール近郊の民家で、夕食を作る女性兵士ブラダ=4月27日(共同)
ウクライナ・ドネツク州チャソフヤール近郊の民家で、夕食を作る女性兵士ブラダ=4月27日(共同)

 共同通信記者は4月下旬、チャソフヤールに投入されているウクライナ軍の「アイダル大隊」に同行取材した。約千人の大隊はロシアが侵攻を始めた2022年2月以降、ドンバス地域(ドネツク州とルガンスク州)に展開してきた。
 28日朝、高台のチャソフヤールから約25キロ離れた村の民家。戦場の方角から昼も夜も爆音が響き、そのたびに窓ガラスが振動する。半ズボンでくつろいだ姿の砲兵ドミトロ(35)が庭に座り込んで、ペットの犬の腹に付いたノミを指でつまんで除いていた。
 太い腕に入れ墨を施したドミトロは妻と娘を故郷に残して約2年間、軍務に就く。「自分も生身の人間だ。戦場で死ぬのは怖い。仲間と励まし合ったり、冗談を言ったりして乗り越えようとしている」
 5日前、戦闘に従事したばかりだという。犬と触れ合って、日常を少しでも取り戻そうとしているように見えた。
 家主が避難して軍が接収した民家には、ドミトロら3人が寝起きしていた。ニワトリが放し飼いされた田園の村に溶け込み、外見から軍拠点と分からない。塀に囲まれた敷地には多連装ロケット砲を積んだ軍用車が止まっていた。
 玄関近くに機関銃や手りゅう弾などが置かれ、出撃の準備が整う。冷蔵庫に配給の野菜や肉、缶詰がそろい、食事は自炊だ。大隊の副隊長アンドリー(27)によると、歩兵は通常1~2週間の交代制で前線の塹壕などに派遣されている。
 ただ兵士不足が深刻化し、1人が3週間も前線に張り付いたり、指揮官級の幹部が派遣されたりしている。
 砲兵の班は本来の定員は4人だが、2人で運用。発射から撤収まで余計に時間がかかるため、攻撃される危険が高まっている。
 大学を中退した志願兵の女性ブラダ(21)は「国民は国を守る義務を負う。全員が果たすべきだ」と声を張る。アンドリーは徴兵逃れが横行しているとして「一部の人間に戦う責任が押し付けられた。交代が必要だ。前線の兵士は心身共に疲れ切っている」と憤った。(敬称略、チャソフヤール共同)

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