アリも孤独で寿命が縮む ストレスで活性酸素増加

 群れで暮らす社会性昆虫のアリを1匹だけで孤立させると寿命が短くなる理由の一端を明らかにしたと、産業技術総合研究所などのチームが7日までに発表した。ストレスに反応して体内でつくられる活性酸素が肝臓に相当する器官で増えていた。活性酸素から体を守る抗酸化剤を投与すると生存期間が改善した。

実験で使ったオオアリ。行動観察のための2次元バーコードが取り付けられている(産業技術総合研究所提供)
実験で使ったオオアリ。行動観察のための2次元バーコードが取り付けられている(産業技術総合研究所提供)

 孤立した環境が健康に悪影響を与えるというデータは人間でも得られている。ただ、他の動物を含めて、何が寿命を縮めているのか詳しくは分かっていない。チームの古藤日子・産総研主任研究員(行動生態学)は「孤立死の仕組みがアリと人間で全く同じだとは言えないが、活性酸素は多くの生物が持っている物質なので、アリを通じて人間で使える薬の候補を探せる可能性がある」と話している。
 チームは、オオアリに2次元バーコードを取り付けて、1匹だけで飼育した場合と、10匹のグループで飼育した場合に分けて行動を観察。1匹だけのアリは、飼育箱に置いた巣にはほぼ寄りつかず、壁際にいる時間が長かった。生存期間は、グループで飼育したアリの10分の1程度だった。
 さまざまな遺伝子の働きを調べると、孤立したアリでは約900種類の遺伝子で働きが変化。活性酸素をつくる酵素の量がグループで飼育したアリよりも多く、壁際に長くいたアリほど多かった。孤立したアリに抗酸化剤の一つ「メラトニン」を投与すると、生存期間が改善し、壁際にいる時間も短くなったという。
 チームは今後、活性酸素の増加とアリの行動変化の関係を調べる。

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