ウクライナの地雷 日本技術、地雷除去に貢献 ロ撤退地域、相次ぐ死傷者【大型サイド】
ウクライナで、日本政府が地雷や不発弾の除去支援に力を入れている。ロシア軍が撤退した地域で死傷者が相次ぐ中、日本で開発された最新鋭探知機が効果を発揮。日本の一層の技術支援を期待する声が広がっている。
7月中旬、首都キーウ(キエフ)郊外ブチャの森林。無数の松の木が倒され、空間が広がる。黒焦げとなった木々が戦闘の爪痕を感じさせる。「ロシア軍が武器を保管していた場所だ。われわれが奪還したが、大量の地雷がまかれた」。ウクライナ非常事態庁幹部オレクサンドル・オスタポフ氏が説明した。
ロシア軍支配下で多数の市民が虐殺されたブチャを、ウクライナが奪還したのは昨年4月。非常事態庁は現在、ブチャを含めたロシア軍撤退地域で、地雷や不発弾の処理を進める。1ユニット5人、全土で136ユニットが活動する。
この森林で作業するウラディスラブ・バシレンコさん(26)が探知機を使いゆっくりと歩く。手にするのは「ALIS」(エーリス)。東北大の佐藤源之名誉教授が開発、金属探知機と地中レーダーで正確な位置を効率的に探知できるほか、地中の様子が画像化されるため、地中の金属が地雷か否かを判別できる。
長く内戦が続いたカンボジアでもエーリスの有効性は実証済み。従来の金属探知機では、反応した場所を掘り起こすと、薬きょうなど単なる金属片のケースも多かったが、掘り出す前に形状が特定できれば作業効率は上がる。
バシレンコさんは「画像がはっきりしていて地中の物体が分かる」と強調。オスタポフ氏は「地中の金属が何なのかに見当が付けば、安全対策にも生かせる」と指摘、「対人地雷と対戦車地雷とでは、取り出す作業も変わる」と付け加えた。
ウクライナ当局によると、これまでに軍人、民間人問わず220人以上が地雷で死亡した。5月時点で国土の3割に地雷や不発弾が埋まり、500万人が危険物の近くに居住しているとされる。完全な除去には少なくとも10年は必要だ。
日本政府は国際協力機構(JICA)を通じ現在4台のエーリスを提供し、今後数十台まで増やす方針。オスタポフ氏は日本の支援に謝意を表し、「汚染地帯は広がっており、さらに支援してほしい」と訴えた。(ブチャ共同=平野雄吾)