「付添犬」派遣百件超 被害の子どもに寄り添い 誕生3年、支援不足課題【スクランブル】

 性的虐待など犯罪被害が疑われる子どもに検察官や児童相談所の職員らが話を聴く際、子どもが安心できるように寄り添う「付添犬」が誕生して今月で3年となる。派遣実績は東京、神奈川、愛知の3都県で100件を超えた。つらい体験を証言する精神的負担を軽くすると評価されるが、財政支援や人材不足が課題となっている。

日本介助犬協会の水上言訓練部長と付添犬=2月、愛知県長久手市
日本介助犬協会の水上言訓練部長と付添犬=2月、愛知県長久手市
付添犬=2月、愛知県長久手市
付添犬=2月、愛知県長久手市
付添犬活動のイメージ
付添犬活動のイメージ
日本介助犬協会の水上言訓練部長と付添犬=2月、愛知県長久手市
付添犬=2月、愛知県長久手市
付添犬活動のイメージ

 付添犬の主な活動の場は、検察や警察、児相が連携して被害内容を確認する面接で、要請を受けたNPO法人「子ども支援センターつなっぐ」(横浜市)が調整。日本介助犬協会と日本動物病院協会の2団体から指示役の「ハンドラー」と共に、子どもが保護されている児相や病院などに派遣される。
 つなっぐなどによると、被害に遭った子どもは心を閉ざしたり情緒不安定になったりすることが多いが、犬と触れ合い緊張を解くことで「話してもいい」と前向きになるケースがあり、聞き取る側からも「会話の潤滑油になる」と評価されているという。
 発祥の米国では1989年に4歳女児の性的虐待事件をきっかけに制度化され、今は約300匹が活動する。名古屋市中央児相の丸山洋子医師は「トラウマ(心的外傷)症状は安全な場所に移ってから表に出ることが多く、証言の負担は大きい。米国では犬の寄り添いが子どもの不安や緊張を和らげるなど成果を上げている」と話す。
 日本では2014年、児童精神科医らが司法手続きへの導入を目指して取り組みを始め、弁護士も加わって19年4月に「つなっぐ」を設立。同団体の理事が中心の認証委員会によって20年3月に付添犬1号のゴールデンレトリバー「フラン」が誕生した。初めての場所でも動じない穏やかな性格の犬が向いているといい、現在まで18匹を認証、引退犬などを除く12匹が活動中だ。
 20年7月には裁判所の一室で被害証言をする児童と同伴入廷が認められ、その後計3件に増えるなど活動の場は広がる。
 一方で、育成や派遣費用などは寄付頼みだ。日本介助犬協会によると1匹の育成費用は250万円程度。国や自治体での制度化が進まず、公的な補助金も一部に限られる。
 現在の活動範囲は「司法の場で信頼を得るため慎重に進めてきた」(つなっぐ関係者)との事情もあり、メンバーが主に活動する3都県のみ。他地域に広げるには、捜査機関や裁判所、児相をつなぐ人材の確保も欠かせない。
 ハンドラーとして現場に同行してきた日本介助犬協会の水上言訓練部長は「付添犬との触れ合いで心を開く子どもを何度も見てきた。多くの人に活動を知ってほしい」と話している。

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