「受診控え」診療所を直撃 過度な恐れ、解消不可欠【新型コロナ 検証第1波】

 「まさか平時の半数以下になるとは」

診療所の医師はフェースシールドを着けるなど感染予防を徹底して診療を続けた=6月初旬、静岡市駿河区のかわはら医院
診療所の医師はフェースシールドを着けるなど感染予防を徹底して診療を続けた=6月初旬、静岡市駿河区のかわはら医院

 6月、静岡市駿河区にある小児科・アレルギー科「かわはら医院」。院長の河原秀俊医師(57)は新型コロナウイルスの感染リスクを懸念した患者の「受診控え」による影響を、来院者記録を示しながら明かした。
 3月、4月の患者数は昨年3月に比べて4割前後減少。5月は県内の感染状況が落ち着いたにもかかわらず58%減まで落ち込み、6月もやや持ち直した程度にとどまったという。
 市静岡医師会理事で感染症担当でもある河原医師はコロナ対策を徹底している。受付で検温とともに本人や家族の体調を細かく聞き、一般外来の診察と乳幼児健診・予防接種の時間をずらしている。そもそも建物の構造自体が、両者の動線を分けた造りになっている。それでも起きた受診控え。「子どもを感染させたくない保護者心理は相当なもの。赤字に陥る開業医が出てもおかしくない」と言う。
 県中部の別の男性小児科医も5月の患者数が前年に比べ半減し、雇用調整助成金を活用してしのいだ。「この状況が続けば給料カットや職員の解雇を検討しなければならない」。県保険医協会の緊急調査で「患者も収入も減った」と回答した医師は8割超。受診控えは医療界全体の問題に浮上した。
 医師らが自身の収入減以上に憂慮するのは、受診控えで乳幼児の疾患や発達の遅れが見逃される事態だ。予防接種の先延ばしも重病を罹患(りかん)するリスクを高める。県東部の男性小児科医は電話やオンラインは薬を処方する際などで有用とする一方、「直接診て分かることがある。原則はあくまで対面診察」と言い切る。
 受診控えは有効な治療法が開発されるまで感染拡大のたびに繰り返される恐れがある。かかりつけ医が自施設の経営に気を取られながら仕事をする状況もまた、健全な地域医療の姿とは言えない。
 「受診控えを是正する努力が不可欠」と河原医師。こうも付け加えた。「コロナに対する過度な不安感を粘り強くほぐし、『正しく恐れる意識』を定着させたい」

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞