<高校野球>7イニング制意見交換会参加の掛川西・大石卓哉監督に聞く「甲子園前提」の議論に疑問

日本高野連は2025年、10回にわたって「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」を実施し、最終報告書をまとめた。これを受けて5月30日と6月6日、大阪桐蔭高の西谷浩一監督や日本ハムファイターズの栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー、前U-18日本代表監督の小倉全由氏らによる意見交換会を開く。6月6日の回に参加する、静岡県立掛川西高の大石卓哉監督(46)に、7イニング制についての考えを聞いた。

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―7イニング制についてどう思いますか。
結論から言うと、7イニング制は早急というか反対ですね。
夏の甲子園をやるために、7回制の議論が深まっていったんだと思うんです。

「甲子園で」「あの期間で」「あのチーム数と試合数をこなすには」ということを踏まえてのことだと。甲子園で全国大会をやる、ということに限って言えば(現状で)無理があるのは間違いない。ただ、甲子園で試合をするという前提を変えさえすれば、いくらでも(他に)やりようがあるはずです。

高校野球を全部7回にする、春も、地方大会も、というのはやや乱暴ではないか。県大会レベルならナイターや早朝の開催、日程の調整などもできます。

26年ぶりに出場した甲子園で1勝を挙げ、喜ぶ掛川西高ナイン=2024年、甲子園

どうしても7回でというのなら、試合数確保と両輪で進めるのがいいと思います。リーグ戦にするなど「機会」を減らさないためにできることはないか、考える必要がある。
暫定とか試行的に実施してみるというのも反対です。指導者や運営側には「次の大会」があるけれど、その年の子たちには「次」がない。今の子どもたちが幸せになることが大事です。

木製バットの使用やリエントリー制など独自ルールで毎年実施しているリーグ戦「リーガ・アグレシーバ」での交流風景=2023年3月、沼津商高


―最終報告書には7イニング制の狙いとして、熱中症リスク低減のほか、部員数減少対策、部員の障害予防、教員の働き方改革などの課題に対して有効と記されています。
正直なところ賛同はできないです。
そもそも硬式野球は手軽に始められるスポーツではないと思います。硬式球は当たりどころによっては命を落としたり、障害を負う可能性があるんです。ある程度のレベルのスピードと体力、スキルが必要です。7回制になったから「ちょっとやってみようかな」というものではないでしょう。

7回にして球数が少なくなったとしても、けがはゼロにはならない。
例えば、選手が「たくさん投げたら肩や肘に炎症が起きて、大好きな野球ができなくなる」という経験をしたとしたら、痛くならないような投球間隔、トレーニング、ケアの仕方を学んでいく。失敗を繰り返さない考え方、予防について学ぶ、それこそが教育ではないかと思います。ゼロベースで考えてしまうと、致命的なけがになる前に、どこまでの負荷に耐えられるのか、という自分の限界にもチャレンジできないことになります。

―熱中症対策については掛川西高では以前から熱心に取り組んできましたよね。
それぞれの学校、現場ではかなり気を付けるようになっています。リスクはゼロじゃないけれど、掛川西ではアイススラリー(スポーツドリンクをシャーベット状にした飲み物)を取り入れたり、活動時間に配慮したり、白いスパイク、帽子、ヘルメット、そのヘルメットの中には遮熱シートがあったり。熱中症って、暑さ対策だけすればいいわけじゃないんですよね。加えて緊張、栄養不足、疲労の蓄積等いろいろ要因があります。

試合の合間にアイススラリーを摂取する掛川西高ナイン=2018年、掛川球場

昨夏、採用した夏用の白い帽子(左)。右は秋春用=2025年、焼津球場

2023年夏、2年生エースだった高橋郁真(近大)が初戦で六回に足がつって降板しました。相手(静清)の投手も状態が良く、初戦で掛川球場は(観客が)満杯。(原因は)緊張ですね。五回終了後のクーリングタイムで休んだ後、足がつってしまった。高橋はその経験を生かし、クーリングタイムは完全に止まらずに動き続けていようということにしたんです。食事、睡眠等も準備をし、次の年(2024年)に甲子園に行きました。

静岡大会優勝を決めた掛川西高ナイン。後列右から2人目が大石監督=2024年、草薙球場

―今、必要な議論とは。
そもそも、なぜ今、野球人口が減っているのかの検証が必要です。
部員不足に悩む指導者もいて、体力的に9回を戦い切るのが難しい選手もいる。専用のグラウンドがない、公共交通機関を使って試合会場まで行く、塾に通いながら野球をやる子もいて、「野球が全てではない」価値観もある。

競技人口を増やしたり、野球に親しみ、より良い人生を歩んだりしてもらうために、一番必要なことは、指導者の育成だと思ってます。高校野球を通じて力が付いた、いい思いをできたという選手が、指導者として戻ってくると思いますが、その指導者のレベル、スキルをアップデートし続けられるような環境をつくっていかないと。

これまでの100年、高校野球の指導者たちが一生懸命紡いできた思いを今後100年、発展させていかなきゃならないですよね。高校生が目指したくなるような「目標」を作り上げていく使命はあると思います。それが甲子園という場所で野球をすることなのかどうかは、分かりません。甲子園という舞台、場所にこだわらなくてもいいんじゃないかと。

もともと甲子園て夢の舞台じゃなかったですよね。大会を重ねていくごとに、選手や指導者、ファンやメディアが絡んで今の「甲子園」をつくってきた。場所じゃなくて、目標なんですよね。目標に向かって、指導者が高校生と一緒に毎日歩み続けることに価値があると思うんです。
(聞き手・編集局ニュースセンター結城啓子)

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静岡県に関係する野球の話題を中心に、プロから社会人、大学、高校、中学まで幅広く取り上げます。新聞記事とは異なる切り口で、こぼれ話も織り交ぜながらお届けします。時々バレーボールの話題も提供します。最新情報は X(旧Twitter)「しずおか×スポーツ」で。

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