静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は5月5日に初版発行(奥付)の漫画家塚田ゆうたさん(静岡県出身)の「RIOT」第4集(小学館)を題材に。
(文=論説委員・橋爪充、写真=写真部・久保田竜平)

「月刊!スピリッツ」2024年7月号で始まった連載の第4集。静岡県松崎町がモデルと思われる五十海町の男子高校生シャンハイとアイジ、同じ高校の写真が得意なケーコが「ZINE(ジン)」を制作する。
彼らにとって3冊目のZINEは自信作のようだ。A4中綴じ、24ページ、カラー。初めてネットサービスで外部の印刷所を使った。自分たちが暮らすまちの思い出、という主題も決めた。
近隣の店舗をじっくり取材し、ページの流れにも気を配った。外部のライター(同級生)にも原稿を発注し、アイジのレイアウトはスタイリッシュに。「ZINE」としての体裁が「MAGAZINE」にかなり近づいた。
彼らは、かつてシャンハイの兄のZINEを高く評価し、自らの雑貨屋で販売もしていた初老の男性、アントンさんに自信作を持って行く。「カッケーZINE作ってきたら、店に置いてやる」と言っていたからだ。さて、アントンさんの評価は。
といった流れで話が進むが、単なる成功譚に終わらないのが『RIOT』のいいところ。ZINEのみならず、文化、表現、アートと言われる分野の成果物は点数表もなければ、審判もいない。だから、例えある人が褒めちぎったとしても、それは絶対評価になり得ない。第4巻には、そうしたことが描かれている。
いいZINEとは何か。正解の形はない。「じゃあ、どうすればいいんだよ」という葛藤。ここで歩みを止める者もいるが、3人は探究をやめない。ここがいい。
平綴じの原理を知り、「手縫いで綴じればいいんだよ」などと言うシャンハイ。現実的じゃない、などという野暮な発想は一切ない。やれる。自分たちならやれる。確信だけがここにある。
『RIOT』は「このマンガがすごい!2026」(宝島社)で14位にランクインし、書店員を中心とした有志が選ぶ「マンガ大賞2026」は9位に入った。商業誌連載が初めての新人漫画家としては、破格の評価である。
推す人それぞれに、理由があるだろう。理由の多さが作品の強みだ。筆者は「やれるという確信」がてらいなく描かれているのが推す理由だ。さて、あなたはどうだろう。「推す理由」にその人自身が表出する。こんな作品、めったにない。
静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。
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